休業損害や逸失利益

交通事故で主婦の休業損害に加えて家政婦費用もかかったときは?

  • 更新日:2016.6.1
  • 投稿日:2016.4.25

交通事故で主婦の休業損害に加えて家政婦費用もかかったときは?

Question

福岡県京都郡みやこ町に住んでいます。専業主婦の妻が交通事故にあい入院しています。私は夫ですが、朝から夜まで仕事が忙しくて家事が全く手伝えません。
そこで近所に住む妻の妹に1日幾らかのお金を払って家事を替わってもらっています。この家政婦費用は加害者側から補償されるのでしょうか?

Answer

主婦(家事従事者)の家事労働にも、財産的価値があるとして、賃金センサスの女子労働者の平均賃金を基礎収入に設定して、症状固定前に休んだことに対する休業損害が請求できます(最高裁1974/7/19交民集7巻4号960頁)。

    さて主婦が交通事故のために休業しただけでなく、その休んでいる間の家事を切り盛りするために、さらに家政婦費用を手出しした場合には、主婦としての休業損害に加えて家政婦費用も請求できるのでしょうか。

    ここで無視できないのは、女子学生の基礎収入に関してですが、将来就職して受け取る給与として女子労働者の平均賃金を基礎収入に据え置くときは、その女子が将来労働によって獲得できる利益はこの算定によって評価しつくされていることになるので、将来の労働を二重に評価することになり、家事労働分は加算できないという最高裁判例です(1987/1/19判時1222号24頁)。

    そして、次の3つの参考判例をよく読むと、絶対に家政婦費用が請求できないということにもならないようです。

・家業のクリーニング屋を手伝う兼業主婦について、家事労働の財産的評価は賃金センサスの女子労働者の平均賃金が相当であると計上する以上、休業損害そのものと、代替のための家政婦費用との二重取りは許容されない⇒平均賃金を受け取る場合には家政婦費用は加算できない(神戸地裁1983/2/28交民集16巻1号261頁)。

 

・兼業主婦について、給与を受け取り損ねた分の休業損害のほか(≠女子労働者の平均賃金相当の休業損害ではない)、実際に費やした代替のための家政婦費用の賠償を認めた⇒家政婦費用は加算できる。ただし平均賃金への加算ではない(ミシン工について神戸地裁1985/12/18交民集18巻6号1591頁、生命保険外交員について札幌地裁1983/9/30交民集16巻5号1357頁)。

 

   つまり、兼業していた仕事の1日あたりの給与+1日あたりの家政婦費用≦女子労働者の平均賃金という関係が成り立っているならば、休業損害として算定している部分が家政婦費用とはクロスしていませんので、請求できることになります。

    交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

お問い合わせリンク


菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

当サイトでは、長年の経験と実績を持つプロの弁護士だからこそ書ける、信頼性の高い一次情報などを発信しています。

弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

ページトップ