休業損害や逸失利益
無料相談実施中!お気軽にご相談下さい。
24時間・時間外受付可能!
休業損害や逸失利益
夫は従業員30名の自動車部品工場を営む会社の専務取締役をしています。中小企業で、社長は夫の兄です。夫は会社の株をもっており、役員報酬は月80万円もらっていました。
会社役員が会社から役員報酬を受け取っている場合、普通の給与所得者の給与とは違って、その役員報酬には、実際に労務を提供したことに対する対価の部分と、役員という地位にあることの利益配当の実質を持つ部分が併存していると、裁判所は見ています。
このうち、前者の労務提供の対価部分は、休業損害や逸失利益を算定する際の基礎収入となるものの、後者の利益配当の部分は、その基礎収入には含めないという判断が定着しています(京都地裁昭和59年2月28日交民集17巻1号271頁、大阪地裁昭和59年11月29日交民集17巻6号1654頁)。
そのような扱いが定着している理由には、会社役員の場合には役員でないサラリーマンと比べ仕事内容は大差ないのに支給額が大きく違うことも珍しくなく、また給与のように出勤の頻度と支給額のカットが連動していないことも多く、また、特に同族会社では節税の手段として役員報酬を増やして利益を圧縮している実情があるためと言われています。
では、会社から支給される役員報酬のうち労務対価の部分は何%を占めるのかはどのように判断されるのでしょうか?
裁判例を俯瞰すると以下に挙げる諸要素を総合して決定されているようです。
・会社の規模や同族企業であるかなどの属性
・当該役員の具体的な職務内容
・会社の収益状態と報酬額との関連性
・ほかの役員や従業員の報酬(給与)額との比較
・同族会社か否か
・類似業種や同年齢の平均賃金との対照
例えば、働かないまま役員報酬を得ているだけの名目的役員の場合、労務提供の対価はゼロとして、役員報酬全額が基礎収入から除外されることもあります(山口地裁昭和55年2月8日交民集13巻1号27頁、大阪地裁昭和54年4月24日交民集12巻2号534頁)。
また、役員報酬1200万円の年収だった59歳会社社長の基礎収入について、同年齢の平均賃金が年収650万円であることや、被害者の妻のその会社での給与が月額25万円であったことなどを理由に、労務提供の対価は年720万円であるとして基礎収入を認定したケースもあります(東京地裁平成16年1月20日交民集37巻1号80頁)。
会社役員の場合の基礎収入の%については明確な基準が無い分、当該事案の特徴に加え、弁護士の実力差が比較的反映される場面といえるでしょう。
交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。