休業損害や逸失利益

兼業主婦(パート勤務など)の基礎収入にはどういう数値が入る?

  • 更新日:2018.7.10
  • 投稿日:2016.4.25

兼業主婦(パート勤務など)の基礎収入にはどういう数値が入る?

Question

逸失利益を計算するとき、例えば主婦でもあり、同時に近所のスーパーでパート勤めをしていた(パート収入年間70万円)、兼業主婦だった被害者の基礎収入のところはどういう数値を入れるのですか?

Answer

専業主婦(家事従事者)の場合は、賃金センサスの女子労働者の平均賃金を基礎収入に設定すると説示されています(最高裁1974/7/19交民集7巻4号960頁)。

 

     兼業主婦の場合、実際に収入を得てはいるものの、その実際の収入が、女子労働者の平均賃金をはるかに下回ることも珍しくありません。もし実際の収入額を基準に設定してしまうと、外で働いている女性が外で働いていない女性よりも不利な評価を受けることになってしまいます。

 

  そこで、①現実の収入が平均賃金を下回っているときは専業主婦と同じく平均賃金を基準に設定し(東京地判1989/1/26交民集22巻1号74頁、福岡地判2014/2/13自保ジ1920号56頁、名古屋地判2013/10/30自保ジ1916号130頁)、
逆に②現実の収入が平均賃金を上回っているときは給与所得者と同じく実際の収入額を基準に設定する手法が採用されています。

 

   交通3庁共同提言判タ1014号の例2つを紹介します。
①35歳の薬学部卒の年収600万円の薬剤師兼業主婦
・・・基礎収入は実際の薬剤師収入600万円(>340万2100円=平成9年の賃金センサス)
②35歳の高卒のパート年収180万円の兼業主婦
・・・基礎収入は女子の全年齢平均賃金340万2100円(>180万円=実際のパート収入)

なお、兼業主婦の場合に、主婦業に加えて外でも仕事をして金銭を獲得しているのだから、②の場面でも基礎収入には平均賃金に実際の収入を加算すべきという意見があがることがあります。
   この意見に対しては、
兼業主婦は家事労働に充てる時間を外での労働に充てることで金銭を獲得できている(≒外での仕事に従事する分だけ専業主婦に比べて家庭内での家事労働の質量が減っている、つまり、兼業主婦の家事労働と兼業主婦の現金収入の合算額が専業主婦の家事労働と価値同等と評価することが適切である)という理屈により、パート実収入を平均賃金に加算して基礎収入とすることはできないと実務は取り扱っています(名古屋地判1991/8/30交民集24巻4号1001頁)。

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菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

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弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

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