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Q:交通事故に遭い、福岡県宮若市にある整骨院に4か月間通いました。
相手損保会社から「当方で期間を設けて張り込み調査をして調べたところ、アナタが通院したということで施術証明書に記載されている日のうち5日間は営業時間内にアナタが整骨院を訪れていない事実が確認できた。この5日間は張り込み調査をして裏付けられられたものであるが、その頻度からはそれ以外の日にも実際には通院していない日が多く存在していると考える」として、施術料金の支払拒絶だけでなく、調査会社に支払った調査料100万円の支払請求通知が届きました。
びっくりして整骨院に連絡したところ、整骨院に対しても同様に相手損保から施術料金の支払拒絶通知にとどまらず、超会社に支払った調査料100万円の支払請求通知が届いたそうです。
施術料金を整骨院が支払ってもらえないのは仕方ないとして、さらにこの調査費用という多額の金銭請求に応じないといけないのでしょうか?
A:こんなことがあるのかと驚く人もいるでしょうが、広島地判福山支部2024/4/11自保ジ2176号106頁の事例をアレンジしています。そのほか類似事例として、水戸地判下妻支部2018/2/13自保ジ2029号166頁があります。
現実、たとえば実際には10日間しか施術していないのに、通院日数を加算ねつ造して15日施術したような施術証明書を作成し、患者のサインをもらって提出する、整骨院ぐるみの違法行為が全国で散発しています。ときには、不正請求刑事事件として、整骨院の経営者が逮捕されることもありニュース報道されています。
整骨院の数はなんとコンビニの2倍もあるという統計もあります。店舗数が増えれば1軒に訪れる患者数は減少し、患者数が減少すると必然的に売り上げも縮小します。けしからんことですが、違法行為に手を染めて売り上げの縮小をカバーすることもあるようです。
整骨院の架空請求が発覚する契機として、基金から患者に整骨院での傷病名や通院日数・回数などの照会通知が郵送されたとき、その通知に記されている情報をみて不審におもった患者からの情報提供により、判明することがあります。また、整骨院内の請求を担当する従業員さらには退職した元従業員、院長に対する不満や不正請求への反発から正義感で内部告発することもあるようです。
このQのもとになった事案では、一括対応する損保会社が、架空請求をうたがい調査会社に調査を依頼して、患者の行動確認、整骨院付近での張り込み調査を数日間実施したところ、5日間の架空請求が発覚したというものです。損保会社は、患者を相手にその架空通院分を含めてそのほかの日も通院実績に強い疑義があるとして施術費の支払義務はないという判決をとりつけたのですが、そこにとどまらず、調査会社に支払った100万円ほどの調査費用の賠償を求めたのです。
患者も整骨院も架空請求の事実はないと裁判で否認しましたが、裁判所は架空請求の事実アリと認定しました。
続けて、患者のあずかり知らない所で整骨院が勝手に通院事実を仮装して架空の施術料金を請求するというのは、患者にその記録が開示されればすぐに不正が露見すること明らかであり、にもかかわらず患者に無断で整骨院が単独で架空請求を実施したとは考え難いとして、整骨院による架空請求は患者の了承の下で行われたものとして、患者と整骨院による損保会社への共同不法行為にあたると認定しました。
最後に、損保会社が調査会社に依頼しておこなった患者の行動調査や整骨院での張り込み調査は、相当部分において、違法な架空請求を受けた損保会社にとっては、事実を解明して適正に対処するために必要なものだったと認められることから、調査内容と費用の内容に鑑みて、整骨院と患者が負担すべき必要かつ相当な調査費用は80万円にのぼると裁判所は評価しました。
付記すると、調査の結果をもとに弁護士に対応を依頼するために要した弁護士費用120万円の支払も求めたのですが、調査費用と異なり、弁護士費用は損保会社にとって必ずしも相当因果関係ある費用とは言えないとして8万円程度しか整骨院と患者には請求できないと説示しました。違法行為をした者に求償する弁護士費用の額をここまで抑えるべきかどうかは意見が大きく分かれるところと考えます。
さらにいえば、架空請求とはお金を払えばそれでいいという問題にとどまりません。詐欺という刑法犯に該当しますので、警察に告訴されて警察が動き出すと整骨院だけでなく協力した患者まで一斉逮捕されてデジタルタトゥーがつくおそれがありますので、患者の自己防衛としてはたとえ「慰謝料が実際の通院実績より多くもらえますから得ですよばれる心配は無いですよ」などという誘い文句があっても、それをうかつに信じることなく慎重に行動することが望まれます。