休業損害や逸失利益

交通事故の後遺障害や死亡事故でなぜ中間利息を控除する?

  • 更新日:2022.12.20
  • 投稿日:2016.4.25

交通事故の後遺障害や死亡事故でなぜ中間利息を控除する?

Question

交通事故の被害にあい、賠償額を交渉する際に、加害者側から「後遺症の逸失利益は中間利息を控除して算出しています」と言われました。
そもそも中間利息って日本語は初めて見ます。なぜそういうことをするのですか?

逸失利益の請求

Answer

被害者やその遺族は亡くなったり後遺障害が残った場合には、交通事故に遭わなければ本来得られたはずの、減った収入について逸失利益として請求することができます。

仮に年収500万円の50歳の自営業者が交通事故に遭って両目が失明したため仕事が全くできなくなったとします。
一般には、被害者が67歳までは働けたはずと仮定して逸失利益を算定しますけれども、500万円×労働能力喪失100%×《17年間》=8500万円という計算方法は賠償実務では採用されていません

【17年間】の箇所に【年5%の中間利息を17年間にわたり控除したライプニッツ係数=11.2741】を代わりに入れて計算します。

交通事故賠償金

中間利息の控除

中間利息の控除をするのは、本来交通事故に遭わなければ、毎年毎年17年に分けて入ってくるはずだった収入を、交通事故に遭ったことにより一時金という形で受け取るのだから、受け取った一時金を年5%の割合で利殖して得ることができた利息を予め控除しておくことが公平であるという考え方に基づいています。

今すぐ受け取ることができる100万円と、3年後に受け取る予定だった100万円とは、金銭としての価値が違うという発想に基づいています。
今すぐ受け取ることができる100万円は年5%の利息で運用すると3年後には115万円になります。
同じ100万円であっても、今すぐ受け取る100万円と3年後にしか受け取れない100万円では前者の方が後者よりも価値が高いという考え方をします。

仮に500万円×100%×17年間と単純加算すると、17年後に受け取るはずの500万円をいまもらう500万円と同じ価値だと換算することになってしまい、それから17年経過する間に年5%の利息がつくことになるので、被害者に過大な利益を与えることになってしまうことから、将来受け取る金額については中間利息を控除して現在価値を算定すべきという考え方が、法律の世界では採用されているのです。
結構難しい説明なのですが、「単純に労働能力喪失年数をかけて算定はしないんだ!」と結論だけ覚えていただければまったく問題ありません。

実際の裁判例

なお、この年5%の割合で利殖できたという机上の想定は、低金利が長く続く日本で余りに現実離れしているとして、中間利息の控除を行うにせよ実態に即して年5%未満で計算すべきであるという主張がかつて繰り広げられていました。

しかし、中間利息の控除を民事法定利率である年5%以外で行ってはいけないとする裁判例がでて(最高裁2005/6/14判タ1185号109頁)、中間利息の利率%をめぐる論争には決着がつきました。

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