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道路外への左折自動車が後続バイクを巻き込む事故の過失割合は?

  • 更新日:2023.10.10
  • 投稿日:2023.4.3
バイクを巻き込む事故

福岡県糸島市の片側1車線道路の車道外側線の中を、原付バイクに乗って時速30㎞で走行していました。10m前の車道上をクルマが同じくらいの速度で直進していました。すると、クルマが突然左ウィンカーを出していきなり左折を開始して原付バイクの前に現れ、進路を妨害してきたため、咄嗟にバイクのブレーキをかけようとしたのですが、間に合わずクルマの左ドアにぶつかり、転倒して右大腿骨頸部骨折と右大腿骨転子部骨折の重傷を負いました。クルマは道路外のDIY店の駐車場に入ろうと左折したとのことです。
私はクルマが突然左ウィンカーを出して左折してきたので、ビックリするばかりで自分に過失はないと思うのですが?

名古屋地判2014/8/28自保ジ1934号100頁の事例を参考にしています。
そもそも、道路外施設へ左折する車両と、車両の左後方を直進するバイクとの接触事故はよく見受けられる類型でありながら、別冊判タにも赤本にも過失割合の類型が定められていず、過失割合をめぐって紛争になりがちです。

上記名古屋地判2014/8/28は、バイク10:クルマ90と説示しました。クルマに大きな過失があることは言うまでもないでしょうが、バイクに10%の過失を課した理由として、バイク運転者は事故現場付近には駐車場を伴う施設が路外にあることが認識できて、そこを左折進入してくる車両が存在する可能性について相応の注意を払って走行すべきであり、にもかかわらずクルマの左折に巻き込まれたということは10%の過失を問われてもやむなしと評価しました。

 実のところ、後述のとおりゆうに10をこえる裁判例があるものの、過失割合の数値がバラバラのような感じもあるので、別冊判タによる数値統一化が望まれます。

  • 路外の駐車場に進入するため左折したクルマが左ウィンカーを出していた場合に、バイクがそれを見落としたためブレーキが遅れてクルマにバイクが衝突したケースで、クルマには左折時に一時停止する義務があったのにそれを怠ったと同時に、バイクにはクルマの左ウィンカー点灯を見落とした過失があると、バイク30:クルマ70と説示した東京地判2009/12/24自保ジ1821号104頁
  • 路外のデニーズ駐車場に進入するため左折したクルマが、左折するに先立ち車道の左端に寄らず、歩道から3m離れた位置から左折開始し、かつ、左ウィンカーを出すのが遅く左後方への継続的注視が不十分だったと指摘しつつも、バイクとクルマとの間に数十mの間隔があったのに直進しつづけたバイクにも前方注視不十分の過失があると、バイク20:クルマ80と説示した名古屋地判2007/5/30交民集40巻3号741頁
  • 路外の駐車場に進入するために左折したクルマが30mほどに及んで左ウィンカーを出していた場合に、それをバイクが見落としたためブレーキが遅れてクルマにバイクが衝突したケースで、クルマには左折時に後方注視義務違反があると同時に、バイクにはクルマの左ウィンカー点灯を見落とした過失があると、バイク20:クルマ80と説示した金沢地判2014/1/22自保ジ1944号78頁
  • 路外の駐車場に進入しようと左折する10m手前で左ウィンカーを出して左折したクルマにバイクが衝突したケースで、クルマには合図遅れがあるが、バイクにも軽度の前方不注視があると、バイク5:クルマ95と説示した大阪地判2016/4/25自保ジ1979号17頁
  • 路外駐車場に左折進入したクルマと、道路左端を直進していたバイクとの衝突につき、クルマ運転者に左後方の安全を十分確認しなかった過失がある一方、左折にあたり予め左ウィンカーを出していたから、バイク運転者にも前方を進行する車両の動向を注視すべき義務を怠った過失があるとバイク15:クルマ85と説示した大阪地判2014/12/15自保ジ1939号1頁
  • 路外のガソリンスタンドに進入するために左折した小型貨物自動車が、左ウィンカーとともに左折を開始したのは、合図をした意味がほとんどない状態で、被害者バイクは1~2m左後方を追走していたため回避しようがなく、他方、バイクにも渋滞車両の側方通過の際は左折も予測しながら走行すべきだったとして、バイク5:クルマ95と説示した大阪地判2009/7/28自保ジ1820号114頁
  • 片側2車線道路の路外の会社営業所に進入するため、予め道路の左側端に寄らずに道路中央寄りからほぼ直角に左折を強行したクルマと、他方、クルマが左ウィンカーを転倒していたのにそれを見落とし自動車が直進すると軽信して自動車の動向を確認しなかったバイクの前方不注視義務もあるとバイク15:クルマ85と説示した大阪地判2017/12/5自保ジ2015号149頁
  • 片側3車線道路の第2車線上を進行中の自動車が路外駐車場に進入するため、普通貨物自動車が左折した所、後行直進中のバイクに衝突された事案で、左折前に自動車はできるかぎり左に寄せるべきだったのにそれを怠った過失があるけれども、その過失とバイクが衝突したこととの間には因果関係はないとして、バイク100:クルマ0と説示した東京地判2007/1/13自保ジ1994号91頁
  • 路外駐車場に左折進入する加害自動車と、後行直進バイクとの接触につき、後行直進バイクは間にいた車両のため加害車両の発見が遅れたことから、むしろバイクの前方不注視および車間距離不保持により発生したものであるとして、バイク90:クルマ10と説示した神戸地判2006/8/31自保ジ1986号106頁
  • 信号渋滞に巻き込まれた加害車両が路外の駐車場に左折進入するにあたり、後行から接近してくる直進バイク自身は左折開始前にみて左ウィンカーは出しているもののその後の直進バイクの動静に目をやらず漫然左折した過失がある一方、信号渋滞の左横を追い越しながら走行するにもかかわらず前方車両の進行に対する注意が不十分だったとして、バイク15:クルマ85と説示した大阪地判1998/1/22交民集31巻1号37頁
  • 車道上の駐車車両を追い越してから路外のガソリンスタンドに左折進入しようとした加害貨物自動車が、左後方から歩道上を前進してきた被害バイクと接触した事案で、加害車両が左ウィンカーを出して減速しながら左折進入していたのにそれを十分にバイクが気をつけなかったとして、バイク30:クルマ70と説示した大阪地判2001/1/26交民集34巻1号92頁
  • 片側一車線道路で、路外の駐車場にでようと左折を開始した先行車両と、後続バイクの衝突につき、クルマには左折地点の30m手前で左ウィンカーを合図することを怠った過失がある一方、バイクにも先行車両を追い抜く際に前方注視が不十分だった過失があり、加害車両が減速して合図遅れではあるが左ウィンカーを出していることから、バイク15:クルマ85とした大阪地判2019/1/30交民集52巻1号123頁
  • 加害車両が路外の駐車場に進入するために、左端に十分寄らないで左折実行したため、左後方を直進していたバイクが急ブレーキでロックして前方停止した加害車両との衝突を回避できず転倒した事故について、バイクには前方で左折のため減速し左ウィンカーを出した加害車両の挙動を注視しなかったことや、車間距離不保持の過失があるとして、バイク20:クルマ80とした京都地判2009/3/27交民集52巻2号407頁
  • 片側1車線道路を路外の駐車場に左折進入した加害車両と、左の路肩を後続進行していた被害バイクとの衝突事故につき、左ウィンカーの遅れに加え、直近左折と同程度とまではいえないけれども著しい過失が車両運転者にあったとしつつ、バイクにも前方不注視の過失があるとして、バイク10:クルマ90とした大阪地判2019/9/19交民集52巻5号1147頁

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