菅藤浩三ブログ
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寝たきりなど重篤な障がい者で、自宅介護よりも施設介護の方が適切と思われるケースでは、症状固定となりながらも入居できる施設に空きがないことで、病院からその間離れられず施設に空きが出るまで施設入居を待機せざるをえないことが稀にあります。
実は症状固定から施設入居までの間隔が数年ずれると、同じ年齢で施設に終身入居しながら一時金で賠償される介護費用に差額が生まれるようです。
例えば、平成23年に男性αは55歳で症状固定となったものの、ちょうど1年後の56歳のときから介護施設に入居できた(その間1年間は引き続き病院に入院しつづけた)、同じく男性βは56歳で症状固定となり直ちに介護施設に入居できたとします。
そして、介護施設の1カ月の費用を15万円と固定します。平成23年簡易生命表では55歳の平均余命が約27年間、56歳の平均余命が約26年間です。
βの場合、一時金で請求できる介護費用は年間180万円×26年分の年5%ライプニッツ係数14・3752=2587万5360円となります。
αの場合、一時金で請求できる介護費用は年間180万円×(27年分の年5%ライプニッツ係数14・6430-1年分の年5%ライプニッツ係数0・9524)=2464万3080円となります。
つまり、同じ56歳で同じ余命期間、同じ料金の介護施設に入居していながら、受け取れる介護費用では100万円以上差が出てしまうのです。
このような結果となる原因やそれをやむなしとする理由は1~3のとおり思い浮かびますが、そうはいっても定期金賠償にもそれなりのデメリットはあります。
介護費用の賠償請求にあたってはくれぐれもこういう点に気づくことが大切であることを強調しておきます。
1、中間利息の控除率が同じ1年間でも最初の1年めと最後の1年めで違っている。具体的には、最初の1年めだと0・9524なのだが、26年めの1年間だと0・2678(=14・6430-14・3752)にとどまる。
2、一時金賠償の計算式は結局フィクションで数字を編み出す世界だから完全補償は難しい。
不利だからもっと現実に即した介護費用を受け取りたいと希望する被害者は定期金賠償を選択すれば足りる。
わざわざ一時金賠償のフィクションの世界に修正を施さずともこの範囲の差の発生は一時金賠償を選択した場合の限界として甘受すべきである。
3、αの被害者は症状固定から介護施設に移るまでの1年間、回避できない出費として病院での療養費相当額をもらうことができる。結局、要介護状態に見合う実費は完全に補填されており、特別な不利益は被っていない。