交通事故で無申告者の基礎収入にはどういう数値が入る?

交通事故で無申告者の基礎収入にはどういう数値が入る?

Question

息子が交通事故で意識不明の重体になりました、お医者様の話では意識を戻す見込はないようです。
息子はここ数年、福岡市の博多と天神の界隈で、自転車便を営んで生計を立てていました。ただ、確定申告を全くしていなかったようです。私も息子がどのくらい稼いで暮らしているのか、さっぱりわかりません。
こういうとき、休業損害や逸失利益はどういう扱いになるのですか?

Answer

通常、自営業者の休業損害や逸失利益を算定する際の基礎収入は、事故前年の確定申告控えや市役所の所得証明書を利用して設定します(年ごとに変動があるときは過去数年分を利用することもあります)。

自営業者には、その年分の所得金額が所得控除額を上回るときは、確定申告する義務が課されています(所得税法120条1項)。
無申告者には1年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が法定されて(所得税法241条)、後日の申告の際に無申告加算税も付加されます(国税通則法66条)。

ですから、無申告は歴然とした違法行為ですので本来はあってはいけないのですけど、数年前、脳科学者の茂木健一郎氏が無申告で話題になったように、世の中にいないわけではないようです。

さて、無申告の場合、休業損害や逸失利益の算定にあたり拠るべき確たる数値は、ハッキリつくられてはいません。
しかし、必要経費を支払いながら生計を立ててはいるのでしょうから、無申告だからといって休業損害や逸失利益を全く補填することはできないというのもいかにも酷です。
無申告というのは、その人が税法に即した納税のための手続をとっていないという意味はあっても、その人の労働が経済的に無価値という意味にはつながらないからです。
問題は、無申告者の基礎収入をどのように算定するかということですが、赤字経営者の場合と似た考えがとられています

1つめは、自賠責保険が採用している、1日あたり5700円という定額を上限にするという手法です。
といっても、申告していない自営業の1年間の売上が5700円×365日=208万0500円を下回る場合には、そもそもその労働に5700円の価値を付与する理屈自体が成り立たないことになります。

2つめは、同年齢の平均賃金を参考に、基礎収入がその平均賃金の何割には相当すると推定する手法です(青森地裁1995/12/21交民集28巻6号1812頁、京都地裁2001/9/5自保ジ1440号13頁、東京地裁2001/9/25交民集34巻5号1309頁、神戸地裁1989/12/26交民集22巻6号1502頁、千葉地裁1994/5/26交民集27巻3号698頁、京都地裁1996/4/10交民集29巻6号1899頁、名古屋地裁1997/3/26交民集30巻2号502頁)
その数値も100%の場合もあれば70%の場合など様々です。

なお、賃金センサスの平均賃金を直ちに基礎収入に設定することができるかにということについて、同平均賃金を得られる相当程度の蓋然性の立証が全くなされていないか、その立証が不十分であるケースが散見される、《被害者の年齢・性別・健康状態・学歴・職業のほか、営業規模や出入金の状況、仕事の形態、家族を含めた生活状況、客観的に把握できる事故前の時期の現実収入などを考慮して、その蓋然性を認定する》との手法が抽象的ながら紹介されています(交通事故赤本講演録、平成18年湯川浩昭裁判官)。

立証不十分な例として、実際に就労して収入を得ていたことを裏づける確たる証拠が無いとして、無申告の自営業者に対し休業損害や逸失利益の発生を認めなかった例もあります(東京地判2002/1/29交民集35巻1号170頁、さいたま地判2004/7/26自保ジ1561号21頁、神戸地判2017/9/8自保ジ2010号78頁、静岡地判2015/7/2自保ジ1956号13頁)。

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