休業損害や逸失利益

独り暮らし無職の高齢女子の交通事故被害、家事労働は賠償される?

  • 更新日:2016.6.1
  • 投稿日:2016.4.25

独り暮らし無職の高齢女子の交通事故被害、家事労働は賠償される?

Question

福岡県久留米市の横断歩道を歩いていた78歳の母がクルマにはねられ、遷延性意識障害の重体のまま、症状固定と診断されました。
子供は全て別世帯で独立し、母は父に先立たれたあと、年金で1人暮らしをしていました。
相手損保から金額提示を受けたのですが、慰謝料や介護費用の項目はあったものの、休業損害や逸失利益の項目は「0円」になっていました。
母の暮らしぶりが無価値であると言われたかのようで「0円」にはとても納得できないのですが?

Answer

家事労働がたとえ現実の収入に結びつかずとも逸失利益や休業損害の対象とされ、主婦でも逸失利益や休業損害を受けることができるという判断は確立しています(最高裁1974/7/19交民集7巻4号960頁)。

さて、日常生活を送るために家事労働をしなければならないのは、複数で暮らしていようと1人暮らしであろうと近似しています。
その点に配慮して、78歳の1人暮らしの年金暮らしの女子高齢者が2級相当の高次脳機能障害になってしまったケースで、家事労働について休業損害と逸失利益の発生を肯定した裁判例があります(東京高裁2003/10/30判時1846号20頁)。

あるんですけれども、しかし、実務趨勢の多くは、1人暮らしの無職の女子高齢者には休業損害と逸失利益は発生しないというスタンスをとっているようです(交通3庁共同提言判タ1014号、交通事故赤本2003年版鈴木順子裁判官講演録、名古屋地裁2004/6/25交民集37巻3号798頁、最高裁ウエブサイト2013/7/5、神戸地裁2007/9/10自保ジ1737号22頁、大阪地裁1997/7/24交民集30巻4号1028頁、神戸地裁2014/4/30自保ジ1924号43頁)。

その理由として《家事労働が財産的価値あるものとして金銭補償の対象となるのは、ひとえにそれが他人のために行う労働だからであり自分自身のためにだけこれを行う場合には財産的価値あるものと評価できないから》と引用されています。

ですから、独り暮らしで無職の女子高齢者の場合に、家事労働に関して休業損害や逸失利益を請求するのは、他の人に家事代替をやってもらい実費が発生するなどの場合を除けば、残念ながら実務趨勢からは難しいと思われます。

ご家族が、交通事故のために遷延性意識障害に陥られてお困りのときは、ぜひとも豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

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菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

当サイトでは、長年の経験と実績を持つプロの弁護士だからこそ書ける、信頼性の高い一次情報などを発信しています。

弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

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