過失相殺
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過失相殺
私は福岡市南区に住む68歳の女性です。福岡市博多駅のバスターミナルで路線バスがルート旋回して動き出しました。私が乗ろうとしていたのはまさにそのバスで、乗り過ごすと次に私が乗れるバスは30分待つ必要があるので、慌ててバスに停まってもらおうと、手を振りながら慌ててバスの右前方から左に向かって横切ったのですが、バス運転手が左側の方を見ていたので私に気づかず、横切り終わる直前でバスに衝突されて怪我を負いました。
東京地判1987/1/29交民集20巻1号140頁で同様の事例がとりあげられています。
その裁判例で被害者とバス会社のそれぞれの言い分を並べると次のとおりです。
・ターミナルには間断なくタクシーやバスが通行しており、横断は歩行者自ら危険にさらすようなものである。
・歩行者がルートを安全に横切るために横断歩道が設置されている。 「横断歩道を渡りましょう」という立て看板も設置されている。にもかかわらず守っていない。
・駅前のバスターミナルでは、現実に、横断歩道があってもそれを利用せずに車道を横断する歩行者が多かった。
・バス運転手も当然そういう歩行者がいることは容易に想定できる。
・歩行者は手を振りながら横断しており、バス運転手にとって接近してくる歩行者を発見することは物理的に容易であったし、回避しやすい状況にあった。
・歩行者は68歳高齢者という交通弱者である。
・立て看板はあるものの、法律上の横断禁止標識ではない。
裁判所は、これらの事情を勘案し、歩行者の過失を10%と評価しました。やはり駅ターミナルでは歩行者が横断歩道以外を横断する可能性が高い場所とはいえ、歩行者としてもあくまで車道を横断していたリスクに対する自己責任が幾許か課されることを免れはできないようです。
ほかにも、夜間横断禁止規制のある駅前ロータリーを相手車両の発進を認識しながら先に横断完了できるものと判断を誤り横断しつづけたあげくに、クルマと衝突して怪我した歩行者に40%の過失相殺を講じた東京地裁2015/8/5自保ジ1958号146頁もあります。
※似たような事案でも、裁判官ごとに過失割合の数値が異なることは、実際の裁判でもかなり見受けられます。各事例で示された数値が絶対的数値であると誤用されないようご注意願います。
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