交通事故Q&A
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交通事故Q&A
福岡市南区バイパスを、福岡市内中心部にむかってバイクで走行していました。福岡市南区バイパスは混雑して、2車線ともクルマがびっしり渋滞して停止状態だったので、私はバイクで、第1車線の左端の隙間をすり抜けていました。すると、対向車線から、渋滞中の2車線のクルマとクルマの間を通って、駐車場に入ろうと加害車両が右折をはじめるのが見えました。私はビックリしてバランスを失し、ハンドルを左に切り、加害車両との接触は回避できたのですが、道路沿いの鉄柱に衝突して大怪我したのです。
ところが、加害車両の損保会社担当は「接触していないから、バイクの独り相撲と同じで責任はないのでは」と言い放って、責任を否定しています。しかし、ハンドルを切らなければ加害車両とぶつかっていた可能性もあるわけで、とうてい加害車両の言い分は納得できないのですが?
渋滞中の車両間を加害車両が右折しようとしたことがきっかけで、バイクは加害車両を避けようとして加害車両との接触は回避できたものの、別の物体に衝突したというこの事案は、神戸地判1998/10/29交民集31巻5号1600頁の事例を参考にしています。
まず、接触していないという事実が加害車両の責任を免れさせるかですが、非接触事故に関するリード判例として、加害車両の接近に驚いた歩行者が、避けようと転倒して怪我したという最高判1972/5/30判タ278号145頁があります。
「接触がないときであっても、車両の運行が被害を被った歩行者の予測を裏切るような常軌を逸したものであって、歩行者がこれによって危険を避けるべき方向を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によって傷害が生じた場合には、車両の運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認める」
上記最高判1972/5/30では、常軌を逸するとか、衝突にも比すべき事態とか、オーバーな表現が用いられていますが、その後の下級審裁判例を眺める限り、常軌を逸していなくても、非接触事故で加害車両の責任を認めた裁判例が続出しており、要するに、非接触事故であるという点だけを強調して、加害車両の責任を否定することはできないということです。
では、非接触であることは、接触した場合に比べ、被害者に不利に斟酌されることはないのでしょうか。
例えば、加害車両が右折を開始していたとしても、被害者が慌てずにバイクでそのまま直進していたならば、タイミング的に両車が接触することなく無事通過できたというシチュエーションだったときは、被害者が加害車両の接近に過剰に反応して不必要不適切な措置をとったことが、被害者の受傷の原因だとして、加害車両の責任を全否定することもあります(東京地判2004/11/4交民集37巻6号1589頁)。
このように、非接触事故においては、接触事故に比べて、過失割合を加害者に有利に修正することも珍しくありません。
他方、被害者がとった回避措置のために非接触事故になったとしても、被害者がその回避措置をとらなければまず接触していたであろうし、かつ、被害者が驚いてとっさに取った回避措置が当該状況からは不適切なものでなく、普通の人ならその回避措置以上に有効な回避措置をとっさに選択することはできなかったと思料される場面で、被害者が回避措置をとって非接触になったことを、被害者に不利に斟酌してしまうと、まさに逃げ損になりかねません。何も逃げずに真正面からぶつかればよかったのに、とか明らかに不合理な価値判断です。
で 従って、非接触事故であっても、時間的空間的心理的に切迫した状況下で、被害者がとった接触回避行動が不適切と言えない場合には、非接触事故であること回避行動をとったことを、被害者に不利に斟酌しない裁判例も少なくありません。例えば横浜地判2001/9/28自保ジ1429号とか。
本件事故で上記神戸地判1998/10/29交民集31巻5号1600頁は「バイクは加害車両に接触しておらず、単にその発見が遅れたために動揺して平衡を失って、歩道の鉄柱に衝突した。
接触もしないのにバランスを失ったことからしても、時速50kmという危険な速度ですり抜けをしていたことが推定される」として、バイクの制限速度違反などを勘案し、バイク60:加害車両40と評価しました。
※似たような事案でも、裁判官ごとに過失割合の数値が異なることは、実際の裁判でもかなり見受けられます。各事例で示された数値が絶対的数値であると誤用されないようにご注意願います。
交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。