過失相殺


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過失相殺
娘が大分市から福岡市に向かう高速バスに乗車して移動中、バス運転手が操作を誤り高速道路の壁に激突する交通事故に巻き込まれました。バス運転手の過労による居眠り運転が操作ミスの原因のようです。
バス運転手は壁に直接激突する格好で死亡し、そして、座席に座っていた娘はシートベルトをしていなかったため、衝突の衝撃で窓ガラスを割って前方の道路に投げ出される格好になり、打ち所が悪くアタマを大怪我してしまい、いまも意識不明の状況にあります。
バス会社との示談交渉の最中、「高速バス乗車中でシートベルトを装着していなかったので、申し上げにくいけれど娘さんにも過失がある」と言われました。 シートベルトをしないで座席に載っているときに、交通事故に遭うと過失相殺は免れないのでしょうか?
娘さんの回復を心より祈念します。
シートベルト着用義務は、高速道路自動車専用道路のみならず一般道路についても、1992年11月1日から、運転席助手席で罰則付きで義務化されました。
そして、2008年6月1日から、後部座席でも義務化されました。しかも高速道路自動車専用道路の場合には後部座席の装着義務違反には罰則が科されます。
つまり、クルマに乗っている者は、法律上の除外事由に該当しない限り、皆シートベルトを装着しなければなりません。
ところで、義務化という表現を使っていますが、この義務を課されるのはあくまでクルマの運転者です。道交法71条の3第2項本文では《自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を、運転席以外の乗車装置に乗車させて自動車を運転してはならない》と表現されています。
シートベルトを装着することで、装着しない場合に比べ、車外放出や前席への衝突による全身強打の危険を回避し、装着者自身や前席の人の身体を守る効果があるとつとに指摘されています。
公益財団法人交通事故総合分析センターが作成した、2003年3月発行【シートベルトの効果に関する研究】では、シートベルトの装着の有無で致死率が10倍異なることが報告されています。特に車外放出のリスクを劇的に減らす効果があると言われています。
先ほど法的義務はあくまで運転者に課されていると言いましたが、シートベルトの装着が単なる励行ではなく義務化されていることは社会一般に既に定着していること、そして、シートベルトの効能は着用者自身の生命身体の保護にあるのだから、たとえ着用すべき者が法律の名宛人になっていなくても自らのために当然に装着しておくことが励行されることから、被害拡大の危険を暗黙に承知しつつその回避措置を講じなかったと評価でき、シートベルト不装着の者に対する幾許かの過失相殺は原則としてやむを得ないと考えられています。
特に高速バスやタクシーの場合、車内のステッカー掲示や放送の中で、搭乗時にシートベルト装着を乗客に促していることが多いため、シートベルト未装着で交通事故に遭遇したときは、過失相殺を主張される可能性は一般乗用車よりも高いと思われます。
ただし、シートベルト未装着が常に過失相殺の対象となるとは限りません。
例えば、加害者にも著しい過失が存在する場合(Qの場合には運転手が過労により居眠りしていること)や、シートベルトの装着の有無によって結果発生に大差なかったと考えられる場合(例えばQの場合はバス運転手のすぐ後ろの座席に座っており、たとえシートベルトをしていてもバス運転手に続き壁と座席に挟まれて圧迫死など重篤な結果を招いていたと想像されるとき)には、例外的に、シートベルト未装着の事実を過失相殺の対象としない扱いも十分ありうるところです。
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