過失相殺
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過失相殺
福岡県糸島市に住んでいます。福岡マラソンに備えて日々公道をランニングしています。ただ若い頃に心室頻脈のため、何度か突然失神した経験があります。
大阪地裁2015/2/4自保ジ1947号78頁、大阪高裁2015/10/9自保ジ1959号1頁でとりあげられた案件です。
交通事故の被害者にも加害者とされたクルマの側にも決定的な落ち度らしい要素が見当たらない場合に、裁判官がどのような考え方をして過失割合を定めるのかをうかがい知ることのできる裁判例といえます。
まず、クルマの運転者に対し「歩道のすぐ左の車線を走行していたのであるから、歩道上の歩行者の状況に十分注意して、飛び出しや不意の事態が生じても回避できるような態勢で走行すべきであるのに、その注意を十分果たさなかった結果の交通事故である」と一定の過失あると認定しました。
ただクルマの運転者の過失の度合いについては「一貫してクルマの進行方向の信号は青だったことからすれば、赤信号の横断歩道上に歩行者が倒れ込んでくることを強く想定しながら走行するべきとまでいえない。また、歩行者が倒れてからクルマがその場を通過するまでの時間はごくわずかであり、歩行者が横断歩道上にいきなり倒れ込んできた事態に即応することは容易ではない」と、クルマの過失の度合は小さいと言及しました。
他方、歩行者に「赤信号中にクルマの眼前にいきなり倒れ込んだこと自体は非常に危険であり、交通事故の主因は歩行者にある。また、以前にも失神の既往があり、その意味で失神転倒が全く予見不可能であったというわけではなく、体調不良が起きても重大な事故につながらないよう信号待ちの立ち位置を選択することもできた」と一定の過失あると認定しました。
ただ歩行者の過失の度合いについては「意図的な信号無視をしたわけでなく、あくまで原因は体調不良であり、歩行者の過失を交通規範違反に求められるわけでなく、また、失神の既往も多数回あったわけではないから、このような事態に対する予見義務を強く問えるわけではない」と、歩行者の非難要素が小さいと言及しました。
でどうするの?という肝心過失割合の数値については、「このように、絶対的な意味では本件ではいずれの過失も大きいとは到底言えなものであり、その意味で本件は双方にとって極めて不幸な事故である。しかし、本件事故が双方の過失の競合によって起きたことは否定できないところであり、双方の過失の程度を相対的に評価して、一定の過失割合を認定する必要がある」として、歩行者が長時間路上に横臥した場合に比べて車両にとってより回避が困難であることを指摘し、一審では歩行者6:クルマ4 と認定しました。
ところが、二審では、そもそもの前提である歩行者がクルマに接触した事実はないとして、過失割合の問題に触れることなく、クルマの賠償義務を完全否定しました。これはビックリたまげました。
交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。
※似たような事案でも、裁判官ごとに過失割合の数値が異なることは、実際の裁判でもかなり見受けられます。各事例で示された数値が絶対的数値であると誤用されないようご注意願います。