過失相殺

車道横断する歩行者の過失に、交通事故の際の歩行場所で違いが?

  • 更新日:2022.10.13
  • 投稿日:2016.4.25

車道横断する歩行者の過失に、交通事故の際の歩行場所で違いが?

Question

歩行者用もクルマ用も信号機のないところで、昼間、対向1車線ずつの広さの車道を横断していた妻が前方不注視で直進してきたクルマにひかれる交通事故に遭いました。
幸い入院せずに済む怪我だったのですが、知り合いから「車道横断のときは、歩行者も過失相殺されるらしいわよ」と言われました。
大まかな割合を知りたいのですが?

Answer

歩行場所の違いによる過失割合は?

歩行者が信号機のない車道を渡るときは、①横断歩道上②横断歩道付近③横断歩道のない交差点又はその直近④横断歩道が近くに無く交差点でもない位置の4類型に大まかに分けられています。
別冊判タ38号全訂5版の基本割合は次のように設定されています。

横断歩道

横断歩道上【20】・・・歩行者0
なお、横断歩道から1~2m離れた場所や、横断歩道上に停止車両がいるので横断歩道上をそのまま横断できない場合には、横断歩道上と同視されます(別冊判タ16号77頁)。
横断歩道付近【33】・・・歩行者30
横断歩道付近とは、片側2車線以上の広さで交通量が多くクルマが高速で行き来している車道の場合には横断歩道からの距離が40~50m以内の場所を、それ以外の車道の場合には横断歩道からの距離が20~30m以内の場所を指すのが妥当と解されています(別冊判タ16号77頁)。
横断歩道のない交差点又はその直近【34】・・・歩行者20 交差点の直近とは、幅員の広い道路では交差点から10m以内の場所を、そうでもない道路ではそれ以下の範囲を指すのが妥当と解されています(別冊判タ16号91頁)。
横断歩道が近くに無く交差点でもない位置【37】・・・歩行者20

歩行者の義務とは?

一見すると、「横断歩道から20m離れた位置を横断している歩行者Aと、横断歩道のないところを横断している歩行者Bがいた場合、横断歩道により遠いBがより近いAよりも厚く保護されるのはおかしくない?」という疑問も浮上してくるのではないでしょうか。
しかし、法律は、歩行者に横断歩道がある場所の付近においてはその横断歩道によって道路を横断しなければならない義務を課しています(道交法12条1項)。この道交法12条1項の定めは逆に《歩行者は横断歩道付近では横断歩道を使わないと義務違反だ》という意味合いを導くのです。
ちなみに、横断歩道が近くに無い場合、歩行者はどこを横断しなければならないとまでは道交法はハッキリ命じていません
このように②は③④に比べ、歩行者が法律が明文で定めたルール違反をしているという点が、より過失割合の斟酌では重視されているようです。
横断歩道が見える範囲ではくれぐれも横断歩道上を渡らないと同じような交通事故に遭っても補償が大きく減じられてしまうことになりかねません

時と場合によって異なる割合

ただし、基本割合という言い方をしているように、昼間か夜か、住宅街や商店街か、歩行者は幼児や高齢者か、歩道と車道の区別があるかなどの修正要素で、基本割合は変わってきます。
交通事故に詳しい弁護士が、判例などに即してきちんと事案を分析していくことで、相手のいう数値よりも有利な過失割合を主張できることがあります。
「相手の言っている数値って仕方ないの?」と疑問があるときは、ぜひ交通事故に強い弁護士にご依頼いただくことをお勧めします。

横断歩道を渡る歩行者

※似たような事案でも、裁判官ごとに過失割合の数値が異なることは、実際の裁判でもかなり見受けられます。各事例で示された数値が絶対的数値であると誤用されないようご注意願います。

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菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

当サイトでは、長年の経験と実績を持つプロの弁護士だからこそ書ける、信頼性の高い一次情報などを発信しています。

弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

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