福岡市博多区で、弁護士向け高次脳機能障害の講義を受講しました

村松太郎(慶応義塾大学医学部精神神経科所属)准教授による、弁護士向けの交通事故精神科実践編を3連休の最終日に受講してきました。

国際疾病分類ICD-10の中では、脳の器質性損傷による精神障害・人格障害・行動障害としてF06~07が設けられています。

   講師は、器質性精神障害であることを立証する資料として、よく用いられるCT・MRIのほか、SPECT・PETを用いての脳内の虚血領域の確認も意味も補助手段として有効であると解説してくれました。

    次に、高次脳機能障害には、ⅰ巣(そう)症状《=脳の損傷部位が局限されており、その損傷部位に対応して、人格制御・言語能力・記憶能力・計算能力などが喪失》あるものと、ⅱ巣症状は見当たらないびまん性軸索損傷《=通常の画像所見では脳の損傷部位が特定できない。ただし記憶障害や攻撃性露見などの人格変化が発生》の双方があり、裁判例でもそれぞれの立証方法がすこし異なる(だからⅰでないからといって立証を諦めてはならない)ことを指摘していました。


それから、高次脳機能障害に遭遇した被害者には、記憶障害や遂行機能障害のほか、感情を抑えられないためさまざまな社会的行動障害が発生します。
次の1)~7)が典型的な社会的行動障害に該当します。そのほかの、記憶障害・注意障害・遂行機能障害の典型例Q&Aで紹介しています。

1)依存性退行・・・子供っぽくなったり、すぐに他人を頼るそぶりを示す
2)感情コントロール低下・・・場違いの場面で笑ったり怒ったりする。大した理由もなく突然感情を爆発させる
3)欲求コントロール低下・・・欲しいと思うと我慢できなくなる。
お菓子を1袋全部食べたり、コーヒーやジュースを1日何杯も飲む。お金も手元にあるだけ全部遣ってしまう
4)対人技能稚拙・・・相手の気持ちや立場を推測できない。
冗談や嫌味や比ゆを理解できず、相手の真意や隠れた本音がわからず勘違いして怒る。
多弁であっても話にまとまりがなく、脱線したり雰囲気にそぐわない会話をする。と思えば、テンポの速い話が理解できない。
5)固執性・・・どうでもいい些細なことにこだわる。
やり始めるとやめられなかったり、一度決めたことを状況に合わせて変更できずやり続ける。同じことを何度も繰り返す。
6)意欲発動性の低下・・・自分からは何もしようとせず、他人から促されないと物事をしようとしない。
7)反社会的行動・・・セクハラや盗みといった社会倫理を逸脱する行動を制御できなくなる。

 

そのほか、厚労省がうつ病や統合失調症の発症メカニズムとして採用する、ストレス脆弱性モデルが最高裁1988/4/21判タ667号99頁の心因的素因に関する過失相殺類推適用説の根拠にあると、精神神経学の領域からのアプローチも紹介しており、参考になりました。

 

最後に、2つの事例判決が、講師により30分ほどとりあげられました。
・(自賠責での事前認定の程度は不明)DSM4とICD10の基準をあてはめてPTSDの成立は否定しつつも、労災新基準を用いて被害者の非器質性精神障害について12級相当の後遺障害アリと認定し素因減額を否定した大阪地裁2008/1/23自保ジ1736号6頁

・(自賠責の事前認定では脳の器質損傷がないため後遺障害非該当)びまん性軸索損傷による高次脳機能障害の罹患の事実を認定し、かつ、その障害の程度が5級2号相当であると認定。高次脳機能障害における社会的機能障害を具体的にどのように立証すべきの大変参考となる名古屋地裁2010/7/30自保ジ1832号18頁

 

   私も高次脳機能障害に罹患した交通事故被害者からのご依頼を現在遂行しておりますので、この講座を受講してとても有益な情報を得ることができました。
それにしても法律家でもない医学部准教授が交通事故裁判例を複数熟読し分析している姿に驚きました。
私も交通事故の専門家として、医学の領域にまたがる知識習得を日々行ってはならないと痛感した3連休のある1日でした。

交通事故でご本人やご家族が高次脳機能障害になられてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

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