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大分県日田市50代女性(死亡)

  • 更新日:2022.7.18
  • 投稿日:2022.7.18

  仕事場での休憩時間中に、勤務先敷地内を歩行していた所、後方から進行してきた前方不注視のフォークリフトの下敷きとなり、お亡くなりになられた被害者のご遺族からご相談いただきました。

  被害者は、多発骨折等の怪我による外傷性ショックで、事故同日に亡くなられました。悲惨な事故だったため、テレビなどでニュース報道されました。

 道路交通法により道路や一時停止などが法規制されている公道とは違って、企業の私有地で発生した事故であること、加害車両が自賠責登録しているクルマでないフォークリフトであることなども含め、今回の事故に関してどのように手続きを行っていくべきかご相談したいとお越しになりました。さいわいご遺族からご相談いただいた時期は、刑事裁判が行われる前だったことから、まず刑事事件を先行させ事実を確定し、刑事事件終了後に民事賠償に入る手順で進める方針を決定し、ご依頼いただきました。
 

 本件で、刑事事件を先行させたかった理由は、加害車両の速度やどの位置で被害者の存在に気づいたか、そして、加害者はどこに視線を向けていたのか等の、具体的な過失内容を確定させてはじめて、民事賠償の際に加害者の責任をどのくらい厳しく追及できるかが左右されることが少なくないからです。

  刑事公判では被告人となった加害者が日頃からフォークリフトを運転しており、フォークリフトという機械そのもののつくりが元来視認性が悪いことを承知していたこと、にもかかわらず、事故当時は漫然と長時間の脇見運転をしてしまったため被害者に気づくのが決定的に遅れてしまったことを自認しました。
  刑事公判では、ご遺族は結果の重大さから実刑を求めていましたが、被告人に前科前歴がないことや賠償責任保険に加入していることなどから、執行猶予付きの禁錮刑が言い渡されました。刑事裁判にも毎回菅藤が参加しました。
 

  刑事判決が確定後、雇用企業含め加害者側に就任している、損保会社経由の弁護士と賠償交渉を開始しました。当方は事故当日の治療費・入院雑費・葬儀関連費用・逸失利益・死亡慰謝料を賠償請求しましたが、加害者側は被害者も後方から大きな音を出すフォークリフトが接近していることは容易に気づけたはずで、にもかかわらずフォークリフトの前を横切るのは甚だしい落ち度であると、大幅な過失相殺を主張してきました。
  そのほか、被害者が独身で弟と暮らしていたことから、逸失利益や死亡慰謝料について金額などを争ってきました。加害者側からの回答は、被害者側の請求額と甚だ乖離する金額であったことから、ご遺族のご要望で、打開するための民事訴訟に移行しました。

  民事裁判では、当方の主張する逸失利益が妥当であることを立証する手段として、弁護士が被害者と同居していた弟と直接面談を行い、ヒアリングした内容を書面でまとめ証拠として提出しました。
  また、本件事故では被害者がフォークリフトの下敷きとなる瞬間の映像が勤務先の防犯カメラに記録されており、刑事裁判で加害者の責任を問う際に自らの責任を自認したにもかかわらず、民事裁判では自らの責任を軽減しようと被害者に責任転嫁するような言辞を行ったことについて反省がなさすぎると慰謝料の増額を主張しました。
  そのほか、事故発生現場である被害者と加害者の勤務先に赴き、刑事記録には載ってない勤務先にはフォークリフトの運転における注意書きなどが複数掲示されている事実を写真撮影し証拠提出しました。

  民事裁判では裁判官から和解勧試され、結果としては、被害者にもフォークリフトの走行が日常的に予定される敷地内において、視覚・聴覚によりフォークリフトの接近に気づくことは容易であったなどの事情から過失相殺は避けられなかったのですが、加害者の主張する数値から大幅に減じることができました。
   また逸失利益についても独身の弟との同居は夫婦間とは異なるため家事従事者としての評価は難しいという留保はついたものの、一定程度は家事に従事していたと認め得るとして、加害者の主張する金額よりも高い基礎収入と査定されました。さらに、死亡慰謝料については、被害者側の主張が認められました。

  結論として、ご遺族も納得できる水準には到達したことから、民事賠償は判決でなく和解という形で決着しました。弁護士費用特約に加入しておられたので、支払上限があるために弁護士費用特約でかかる弁護士費用の満額を補填することはできませんでしたが、和解手続の中で斟酌された弁護士費用も含めると、ご遺族の負担が非常に軽減した格好で終結することができました。

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