自賠責保険金や治療費・休業損害といった内払の充当方法は?

Question福岡県筑紫野市で夫と幼児の3人暮らしをしています。夫が自転車で青信号で自転車横断帯を横断中、横から信号無視でぶつかってきたトラックにはねられて、意識不明の状態が1か月続いたのちにくも膜下出血で亡くなりました。
 加害者の加入する損保会社からは、交通事故から1か月後に治療費100万円が病院に支払われ、交通事故から2か月後に夫の休業損害50万円が支払われました。交通事故から6か月後、夫が亡くなったことで自賠責保険金3000万円が自賠社から振り込まれました。なお、夫の葬儀費用はいったんすぐおりた生命保険で工面したので損保会社からは内払をうけていません。
 ところで、交通事故では元本のほかに遅延損害金も被害者は受け取ることができると聞きました。相手損保からの回答額と遺族の希望額との乖離が大きいので、これから訴訟手続に入るのですが、これら受領した金額はどのように充当されるのですか
Answer  まず交通事故の死傷損害の判決の場合、被った損害項目について、交通事故当日から遅延損害金を起算できることになっています(最高判1962/9/4判タ139号51頁)。

 ちなみに交通事故の判決では、認容額の10%程度を、慰謝料や逸失利益などの損害元本に加え、交通事故と相当因果関係のある損害として加害者側に負担するよう命じることが多いのですが、この弁護士費用に対する遅延損害金も実際に弁護士を依頼した日以降でなく交通事故当日から起算するフィクションを採用しています(最高判1983/9/6判時1092号34頁)。
 
 実際の充当について、わかりやすく理解していただくために、遅延損害金の利率を年5%、治療費100万円、休業損害50万円、そのほかの逸失利益・葬儀費用・慰謝料・弁護士費用などを合算した金額が8000万円、判決が出たのが交通事故日から1年めというケースで説明してみます。

 逸失利益・葬儀費用・慰謝料・弁護士費用を合算した8000万円の部分に対する、自賠責保険金が支払われるまでの間に発生した遅延損害金は、8000万円×年5%×6か月分=200万円になります。
 自賠責保険金は、まず交通事故日から自賠責保険金受領日までに発生した遅延損害金に充当し、その残りを損害金の元本に充当することになっています(最高判2004/12/20判タ1173号154頁)。
 このため、3000万円は自賠責保険金受領日までに発生した200万円に充当され、残り2800万円が元本に充当されるので、判決では充当されなかった残元本5200万円および自賠責保険金受領日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を命じることになるのです。
 他方、治療費100万円や休業損害の内払50万円の部分について、各部分に内払実行日までの遅延損害金を発生させたうえで自賠責保険金と同様の充当方法を是認する裁判例もなくはないのですが(東京地判2010/3/26交民集43巻2号455頁)、多くの裁判例は、これらの内払は、損害費目と実行された内払との結びつきが明確であるから、遅延損害金を免除し元本にそのまま充当させる黙示の合意が存在すると解するのが相当として、自賠責保険金とは異なり、遅延損害金を発生させない扱いが多いです(東京地判2013/12/25交民集46巻6号1619頁、東京地判2015/2/26交民集48巻1号264頁)。
 
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