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福岡県粕屋郡須恵町に住んでいます。休日にドライブ中、後ろから追突されました。事故直後から、首と腰に痛みがあり、整形外科で治療を開始しました。
実は、追突されたときに左膝をハンドルにぶつけて、そのことも医師に問診で伝えたのですが、左膝に腫れも強い痛みもなかったので、左膝は自然に治るでしょうから経過を見ましょうということになりました。
それから3週間ほど首と腰の治療しているうちに、日常生活で左膝にウェイトがのったためか、左膝の痛みが我慢できないくらいに強くなり、左膝も治療を開始してもらうことになりました。
すると、相手損保が「左膝について痛みを訴えた時期は交通事故から3週間経って初めてであり、間隔が開きすぎており交通事故によるものとは捉えがたい。従って、左膝の治療費は支払えない。」と言ってきたのです。
病院で調べてもらったところ、左膝をハンドルにぶつけたことは口で医師に告げただけでしたが、そのときのカルテには記載されていませんでした。しかも、私が通院していた整形外科は、医師診断は週1回だけでローテーションを組んで交替しているので、今となっては、初診時に私の訴えを聞いたかどうかうろ覚えになってしまったと、初診時の医師から言われてしまいました。
カルテに記載がないことで、私は交通事故と関係のない怪我をでっち上げたことにされてしまうのでしょうか、納得がいきません。
医師は診療したときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければなりません(医師法24条)。この診療録をカルテと呼びます。
カルテの作成を医師に法律で義務づけた理由として、《治療の継続性を維持するため・適正な患者の病状把握のため・診療行為の適正確保のため・診療報酬を請求する際の資料とするため・患者にとっての怪我の容態や経過を理解に資するため》、など複数のものが複合してあげられます。
ただ、医師は非常に多忙なため、患者から聞いたこと全てを直ちにカルテに記録してもらえるとは限らず、残念ながら書き漏れがあるのも厳然たる事実です。
カルテ自体の証明力の高低を実務ではどう考えているかですが、カルテは、医師にとって患者の病状の把握と適切な診療上の基礎資料として必要不可欠のものであり、また、診療行為の適正を確保するため、診療の都度、医師本人による作成が法律で義務付けられている書類であるから、医師にとって診療上の必要性と法的義務との両面によってその真実性が担保されている書類であるとして(東京高判1981/9/24判タ452号152頁)、カルテには極めて高い信用性が付与されており、従って、そこに記載された事実については、医師の記載どおりの事実が存在するという推定が強く働くものとされています。
では逆にカルテに記載がない場合ですが、何らの症状も存在しなかったから記載されていないという場面と、症状はあったけれども医師が見落としたあるいは記載を失念したという場面が考えられます。
この点、カルテの基礎資料としての重要性と診療の都度に作成される経時性を強調して、カルテに記載がないことはそのような事実は存在しなかったことを事実上推定させると評価する見解が有力です(東京地判1992/6/8判時1460号85頁、東京地判1992/5/26判タ798号230頁)。
この見解は、症状はあったけれども医師が見落としたあるいは記載を失念したという場面は、ごく限定された特別のシチュエーションにとどまるとして、患者側にその特別の状況の立証責任を課すというものです。
ですので、カルテに記載がない事柄については、如何に患者がそれは医師の記載漏れに過ぎず自分の主張が真実だと訴えていても、真実であることの証明できるだけの客観的な証拠を欠く以上、残念ながら患者に不利に作用するといわざるをえません。
交通事故の場合、医師は被害者にも相手損保にもどちらにも偏らない第三者という評価を受けがちのため、その医師の作成するカルテ自体の持つ信用性が非常に高いからです。
従ってQのケースでは、医師の記憶以外の方法、例えば、病院での初診時の問診票への記載とか、あとあと被害者による加工作出ではないことを裏付ける証拠の探究が必要となるでしょう(被害者自身のメモでは証明力が弱い)。
逆に言えば、交通事故に遭った場合、医師には軽重に関わらず、全ての症状を告げて、かつ、それがカルテに書かれていることを患者自身が確認しておかなければ、医師の多忙にまぎれて、思いもしない不利益を被ることがあるのです。