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高次脳機能障害の自賠責認定が判決で障害無しとなった裁判例がある

  • 更新日:2016.12.2
  • 投稿日:2016.9.25

新潟地裁2016/3/25自保ジ1973号22頁です。
 被害者がさいわい16条請求で自賠責部分を先行回収していたからまだしも、もしそれを講じてなかったら、、、と想像するとぞっとします。

 時系列は次のとおりです
 2005/5/16 自転車乗車中の交通事故(判決では自転車に35%の過失を認定)
       初診時はJCS2、GCS14(軽度の意識障害のレベル)
         →1週間後に意識清明。

 2009/3/5  主治医のC病院が後遺障害無しといったん診断。
        
                       本人は、高校卒業後に専門学校に入学し、普通自動車運転免許に1回で
        合格したり国家資格を取得したり、さしたる生活支障が見当たらない。
                 有意な脳萎縮や脳室拡大も見当たらない

        ⇔本人や家族は,受傷より3年後就職を契機に、記憶力の低下や
         社会適応能力の欠如を明瞭に認識するようになった。
 2010/9/18 症状固定
 2010/12/11 同じC病院で、外傷後高次脳機能障害あり、MRIで右前頭葉に
        脳挫傷ありと指摘する後遺障害診断書を作成

 2012/5/24 高次脳機能障害を理由に、自賠責で7級4号認定
 2012/11/30 異議申立を受けて、自賠責で高次脳機能障害5級2号認定
 
 裁判所は、自賠責が下した被害者に高次脳機能障害ありとの決定を完全否定し、逸失利益を否定し脳挫傷の痕跡の12級障害のみを認めるにとどめました。

 「高次脳機能障害に関する医学的知見からすれば、交通事故と因果関係のある高次脳機能障害の有無は、頭部受傷直後の意識障害の有無及び程度、症状の経過、画像所見を中心に検討するのが相当である。」
 「被害者は、交通事故から3年間は特段問題なく日常生活を送っていたにもかかわらず、3年以上が経過した時点で突如、高次脳機能障害を発症し、さらに、その1年9か月後には症状が悪化したことになり、受傷直後が最悪で時間の経過とともに軽減傾向を示す、外傷性高次脳機能障害の一般的な経過とは整合しない
 「局在性脳損傷が発症した場合に必ずびまん性脳損傷が生じるものではない」
 「被害者の頭部外傷の程度は中等から軽傷に分類されるもので、意識障害の時間も軽度の状態が7日間継続したものと認められる」

 もとより自賠責の認定が裁判所を拘束するものではないのですが、高次脳機能障害を裁判に持ち込んだ場合は、相手損保もカルテを徹底的に分析して争ってくることが予測されるので、高次脳機能障害を多く取り扱ったことのある弁護士に依頼することが大事です。九州で高次脳機能障害を伴う交通事故に遭われた場合は、経験豊富な福岡の菅藤弁護士にご依頼されることをお勧めします。

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