後遺障害非該当の醜状障害は全く斟酌されない?

Question福岡市中央区に住む19歳のOLです。友人の車の助手席に乗っていた時、友人が運転を誤って横滑りを起こして道路脇の電柱に車をぶつけられる交通事故に遭い、私は下あごを骨折する大怪我を負いました。
 私の下あご(頚部)には長さ4cm幅5mmのミミズ腫れが残りました。しかし、自賠責では鶏卵大に達していないということで後遺障害非該当認定を受けました。
 しかし頚部といっても顔面部に近く、横から見た場合には人目に付きやすいので、夏の衣服や髪型では隠し切れません。そんな場所に傷があるのに、相手損保は「後遺障害非該当ですから」と全くこの傷を補償対象として斟酌しようとしないのは、おかしいと思いませんか?
Answer 

 Qのケースは東京地判1995/1/27交民集28巻1号95頁を参考にしました。
 自賠責で醜状障害は後遺症認定の対象となっていますが、画一的便宜的処理を図るために部位・大きさ・形状ごとに等級区分しています。
α:7級12号(外貌に著しい醜状を残すもの)
  頭部の醜状は、指を含まない掌大以上の瘢痕又は頭蓋骨の掌大以上の欠損
  顔面部の醜状は、鶏卵大以上の瘢痕又は10円玉以上の組織陥没
  頚部の醜状は、掌大以上の瘢痕

β:9級16号(外貌に相当程度の醜状を残すもの)
  顔面部で、長さ5cm以上の線条痕で、人目に付く程度以上のもの

γ:12級14号(外貌に醜状を残すもの)
  頭部の醜状は、鶏卵大以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損
  顔面部の醜状は、10円玉以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線条痕
  頚部の醜状は、鶏卵大以上の瘢痕

δ:14級4号(上肢の露出面の醜状)5号(下肢の露出面の醜状)
  上肢は肩関節以下から(なお労災基準では肘関節以下から)手の指先の露出面に掌大の醜状
  下肢は股関節以下から(なお労災基準では膝関節以下から)足の甲の露出面に掌大の醜状
 
  賠償交渉及び紛セでは、自賠責の認定に則した算定に損保会社が固執することが多いのですけれども、裁判に移行した場合は醜状障害の部位・大きさ・色素付着の程度・被害者の性別・年齢・職業など諸般の事情を総合し、たとえ自賠責で後遺障害非該当となった場合でも、後遺症慰謝料を認定する場合も少なくありません
   よく考えれば、例えば頸に鶏卵よりも僅かに小さい瘢痕が残ってしまった場合に全く醜状障害が存在しない場合と同じ評価を下すのはアンフェアですから。
Qのケースで、裁判官は200万円の後遺症慰謝料を認定しました。
  ですので、醜状障害の場合には自賠責の認定が後遺障害非該当であっても必ずしも全く賠償対象にならないとは限らないことを知っておいて損はないでしょう。

 ほかにも、以下のような裁判例があります。

・自らデザインした洋服販売会社を経し、かつ、ファッションモデルとしてそれを着る女性(年齢不詳)の鼻根部に直径1・5cmの色素沈着・毛細血管拡張症の顔面醜状が残っているが、写真ではその存在が明らかとは言えず、部位大きさ色素付着の程度を考えれば、化粧で隠すことも可能でレーザー治療の適応もあるので後遺障害等級非該当であるが、モデルの仕事を受けられなくなったことにかんがみ、後遺症慰謝料を200万円と認定(東京地判2005/5/5自保ジ1617号21頁)。

・10歳女子小学生の右下腿外側に長さ23cm・幅5mm~35mmの線条痕、右下腿内側に直径1~2cmの傷跡が醜状障害として残っているケースで、傷を気にしてスカートを履かずプールに入るにも苦痛を感じていることから、将来の手術の可能性なども踏まえ、後遺障害等級は非該当であるものの150万円の後遺症慰謝料を認定(東京地判2002/11/25自保ジ1498号13頁)

・5歳女子の前額部左側に3cm四方の軽度の隆起と、17mmの縫合瘢痕、並びに、前額部やや左寄りに幅6mm・長さ150mmの線条瘢痕がある醜状障害のケースで、これらの瘢痕は頭髪内と前額部の髪の生え際で髪型によっては隠れてしまう場所にあり、写真上も大きく目立つ醜状とは認められず、大きさ・場所・色素付着の程度から後遺障害は非該当認定であるが、年齢とともに薄れるとは限らず年頃になればその存在を気にするであろうことや、頭蓋内に穴が開いており生涯にわたって頭にねじ止めされた金属片が存在することを考慮し、後遺症慰謝料200万円を認定(東京地判2004/1/26自保ジ1546号21頁)

・機内通訳の仕事に従事していた航空会社の契約社員の女性(年齢不詳)に、上口唇部に約1cmの隆起が残存した醜状障害のケースで、独身女性であること、容姿を重視される職務についていること、同僚からも外貌の変化を指摘されるなど多大な精神的苦痛を受けているとして、後遺障害は非該当認定であるが、後遺症慰謝料100万円を認定(東京地判八王子支部2001/9/14交民集34巻5号1268頁)。
…なおこの裁判例で、被害者の女性は、休業を多く強いられたため皆勤パス(航空会社が解禁の社員に対する報奨制度の一環として自社の航空機の利用を認めるもの。金額に換算して10万円弱)の権利喪失分も賠償すべしと請求したのですが、休業損害の補償対象は現実の収入減少に限られるとして、裁判所はその請求を認めませんでした。

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