物損
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物損
交通事故など加害者の不法行為により<損害>を被った被害者は、加害者にその損害を賠償するよう請求することができます(民法709条ほか)。
ただQのケースでいうと、交通事故で破損した腕時計が本物だったらその価値は70万円でも珍しくないかもしれません、でももしかして偽物だったら一般に70万円をはるかに下回る価値しかないことがほとんどです。
Q&A「経済的全損におけるレッドブックの重みは?」で触れたとおり、賠償請求できる金額の上限は修理費ではなく時価額にとどまりますから、腕時計が本物か偽物かは、相手損保にとっても多大な関心事にならざるをえません。
さて、腕時計が本物であること、すなわち、交通事故の時点での価値が修理見積額40万円を超えていることの証明責任は、賠償請求する被害者に課せられています(最高裁1953/11/20判タ35号44頁)。
支払を求められている加害者が積極的に偽物であることを裏づける証明資料を提出する必要はないのです。
難しい説明になりますが、‘証明責任の分配’において、被害者に<損害>の発生の証明責任を負担させるのは、一般には、自己に有利な法律効果の発生を主張する当事者に、その法律効果の発生を基礎づける法文の要件事実について証明責任を負わせるべきという、法律要件分類説から帰結されるものだと説明されています。
一般の方にはなじみにくい理屈ですが、Qのケースだと腕時計が本物であることの証明責任は被害者に帰属していて、加害者に偽物であると証明せよと求めることはできないと法律は決めているのだ、という箇所だけ覚えていただければ足ります。
ちなみに、腕時計に限らずバッグや宝石など数十万円になるだろう高級動産については、損保会社も慎重に本物か偽物かを検証したのちでないと、賠償対応しない運用のようです。
その理由として、これらのモノは偽物も流布しており、かつて暴力団が正規販売店以外の店舗を巻き込んで、修理見積書や販売領収書などを発行させ、自動車事故での保険金詐欺で多額の賠償金を獲得しようとしたため、正規販売店の証明があるモノ以外は易々と信用しない扱いにしているらしいです。
では腕時計の場合、どういう方法で本物であることを証明するかですが、
・正規販売店に持ち込んで実費を払って修理してもらい領収書を受け取る
・修理するだけの手持ち資金が無いときは正規販売店に持ち込んで修理見積書を発行してもらう(偽物だと修理見積書自体を発行せず現物を返還するそうです。ただ顧客名簿に載っていないということで見積書の発行自体を拒否されることもあります)
・相手損保が協力するならば、指示された調査会社に現物を貸与し本物か偽物かを向こうの費用で確認してもらう
複数の方法が考えられますので、本物なのに偽物と疑われて悔しい思いをされた交通事故被害者は、自分の正当な権利を実現するためにも、手間はかかろうともその手間を惜しまず、本物であることの証明を試みてください。
交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。