物損

怪我はなくても物損で慰謝料を請求できる場面その1は?

  • 更新日:2016.6.1
  • 投稿日:2016.4.25

怪我はなくても物損で慰謝料を請求できる場面その1は?

Question

真夜中自宅で寝ているときに、居眠り運転のトラックが自宅に突っ込んで自宅が大破する交通事故にあいました。幸い怪我はなかったのですが、あの事故以来、怖くて夜中にグッスリ眠れなくなりました。慰謝料はこれでも怪我がないからと請求できないのでしょうか?

Answer

物の損壊しか被害がなく怪我を伴わない場合には、特別の事情がない限り、被害者は加害者に慰謝料を請求できないとされていることは、車にキズをつけられたら、慰謝料も請求できる?のとおりです。
    しかしながら、特別の事情アリとして、例外的に、お尋ねのようなケースで、怪我は無くても慰謝料50万円の支払を加害者に命じた裁判例があります(岡山地裁平成8年9月19日交民集29巻5号1405頁)。

  ほかにも次のような裁判例があります。取りまとめると(その2(その3)のほかにも自宅を損壊され、その際に生命の危険を感じさせられるような事故状況だったり、長期間自宅から離れての不便な生活を余儀なくされるなどの事情があれば、例外的に物損のみであっても慰謝料支払を請求することが可能と考えてよいのではないでしょうか。その場合に認められる慰謝料は数十万円となっています。

・店舗兼自宅にクルマが突入した事故で、まかり間違えば人命に対する危険も発生させ、また、家庭の平穏を侵害されたことについて30万円の慰謝料(大阪地裁平成元年4月14日交民集22巻2号476頁)
・大型トラックが高齢の被害者夫妻の家屋に突っ込んだため、住み慣れた自宅を半年間離れてアパート暮らしを余儀なくされた心労や生活上の不自由さ、さらには、借金をして修復工事などの事後処理に奔走したことなどを踏まえ夫婦2人で60万円の慰謝料(神戸地裁平成13年6月22日交民集34巻3号772頁)
・年の瀬に自宅表玄関にクルマが突入して表玄関が壊された事故で、加害者との賠償交渉が難航したこともあいまって、年末年始を含む1か月以上にわたって表玄関にベニヤ板を打ち付けた状態で過ごさざるをえなかったという生活上の不便を被ったことについて20万円の慰謝料(大阪地裁平成15年7月30日交民集36巻4号1008頁)
・早朝の起床前、砂利を満載した大型トラックが、就寝していた1階部屋の隣室につっこんでくるという、生活の平穏が侵害されたことについて10万円の慰謝料(東京地裁八王子支部昭和50年12月15日交民集8巻6号1761頁)
・深夜、鮮魚用保冷車に突入されて自宅をひどく壊されたため、夫婦で住み慣れた自宅を離れて応急措置が済むまで数か月間も納屋暮らしを強いられた心労や生活上の不便などを踏まえ、60万円の慰謝料(松江地裁益田支部昭和52年4月18日交民集10巻2号561頁)
・深夜、3階建の自宅1階の車庫にクルマが突入した案件で、3階で寝ていた被害者ほか家族が精神的ショックを受け、場合によっては生命身体に影響を与える危険があったことを踏まえ、5万円の慰謝料(名古屋地裁平成15年2月28日自保ジ1499号5頁)
・坂道の下にある店舗兼住宅の店舗部分に車両が突っ込んできた事故によって、住居部分と接続する店舗部分が大きく破壊されたことにより、生活の平穏を害され多大な精神的苦痛を被ったとして120万円の慰謝料(横浜地裁2014/2/17交民集47巻1号268頁)

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