交通事故の加害者本人から見舞金を受け取ったら賠償額は減るの?

交通事故の加害者本人から見舞金を受け取ったら賠償額は減るの?

Question

福岡県宗像市で原付バイクを運転中、後方から居眠りのクルマにノーブレーキでぶつけられる交通事故に遭い、胸椎圧迫骨折で1カ月入院する大怪我を負いました。
加害者は任意保険に加入していたのですが、保険代理店から薦められたそうで、交通事故から1週間後に見舞金だと言って3万円を包んで持ってきました。
被害者の私としてもいろいろ物入りですし、受け取りを拒絶する理由はなかったのですが、ふと気になりました。この3万円を受け取ってしまうと、のちのち加害者の加入する損保会社と示談交渉する際に、3万円内払いとして差し引かれてしまうことはないのでしょうか。

Answer

まず裁判例を紹介します、おおむね3類型に分けることができます。
なお、ここで紹介する裁判例には、被害者が死亡した案件は含んでいません。 なぜなら、被害者が死亡した案件では、香典という形で包まれることが多く、普通の見舞金とは別の事情が存在するからです。

第1、見舞金(かっこの中は金額)全額が損益相殺の対象となるとして、全額を内払いとしてのちの賠償総額から差し引いた裁判例・・・最も多い

大阪地裁2009/2/11判タ1332号103頁(10万円)
神戸地裁1996/5/30交民集29巻3号815頁(20万円)
神戸地裁1993/3/10交民集26巻2号329頁(400万円)
大阪地裁1990/5/17判タ739号144頁(50万円)
大阪地裁1986/6/10交民集19巻3号792頁(1万円)
福岡地裁行橋支部1982/8/17交民集15巻4号1036頁(3万円)
神戸地裁1977/10/26交民集10巻5号1481頁(2万円)
大阪地裁1976/2/26判タ340号275頁(7万5000円)
仙台地裁古川支部1975/12/22交民集8巻6号1808頁(18万円)
青森地裁1970/1/22交民集3巻1号111頁(1万円)
千葉地裁1969/9/26交民集2巻5号1379頁(9万1000円)
大阪地裁1965/12/10判タ187号124頁(7万円)

第2、見舞金は全額損益相殺の対象とならず、受け取った見舞金全額をのちの賠償総額から差し引かなかった裁判例
大阪地裁2007/9/26交民集40巻5号1245頁(10万円)
金沢地裁輪島支部1982/1/28交民集15巻1号176頁(2万円)
神戸地裁1996/12/24交民集29巻6号1845頁(50万円)

第3、受け取った見舞金の一部のみ損益相殺の対象とならないとした裁判例
大阪地裁2008/12/15判タ1330号176頁(107万円のうち65万円を
損益相殺の対象として控除し、残り42万円は控除しなかった)
大阪地裁1996/1/29交民集29巻1号144頁(50万円以上渡した
もののうち40万円を損益相殺の対象として控除し、残り10万円
以上は控除しなかった)

上記裁判例を俯瞰して気づくのは、見舞金の多寡と損益相殺の対象となるか否かは、実は全くの関連性がなかっということです。1万円でも控除する場合もあれば、2万円ならば控除しない場合がありますので。

付言すると、42万円を損益相殺の対象としなかった大阪地裁2008/12/15は後遺障害が1級1号相当であったり、10万円を損益相殺の対象としなかった大阪地裁2007/9/26は後遺障害が2級3号であったりと、交通事故被害者の症状の程度も損益相殺の対象に含めるかを斟酌しているようにも読めます。

モノの本では抽象的に「損害賠償と関係の無い単なる社会生活上の儀礼的な意味での贈与の範囲ならば損益相殺の対象とならない」と画されているものの、なかなかその基準は一義的に明確とまでは言い難いようで、Qのケースも差し引かれる可能性が無いとまでは言いきれないという歯切れの悪い回答になってしまいます。

あと、見舞金は儀礼的な贈与という位置づけですから、その支給はあくまで加害者の自由かつ任意な判断に委ねられます。交通事故にあった場合、被害者から加害者に見舞金を支払うべきだと請求する権利があるわけではありません。その点は誤解されないようにして下さい。

交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

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