損益相殺

交通事故で休業期間中に失業保険を受け取ったら賠償額は減るの?

  • 更新日:2023.9.27
  • 投稿日:2016.4.25
福岡県田川市に住んでいる派遣社員です。契約更新が1か月後に迫っているときに足を骨折する重傷に遭い4カ月の入院生活を送ることになりました。派遣契約は期間満了で更新できなかったので、期間満了による退職ということですぐに失業保険を申請しました。
相手損保からも入院期間中は就業不能ということで、過去の給与実績に応じた休業損害を毎月受け取っています。
私は、契約更新予定日以降は、相手損保からの休業損害と失業保険の2つをもらっていることになりますが、もらい過ぎということで、後から差し引かれることはないのでしょうか。

失業保険とは

失業保険は、今まで働いていた人が、自己都合で離職したり、倒産や解雇といった会社都合で、仕事を失った場合、失業中の糧を心配せずに新しい仕事を探すことに専念できるよう、国から支給される給付金です。
失業保険の給付額は、過去6か月の給与総額・失業時の年齢・勤続年数・退職理由を組み合わせて、支給日額や給付日数が決定されます。
一般に、以前の勤務先の退職前6か月間の給与平均の50~80%が支払われますが、退職前の賃金が低いほど高い%が適用されるようです。
失業保険とは

失業保険金は損益相殺の対象?

さてQのとおり、失業保険と休業損害を足すと、もし交通事故に遭わずに普通に働いていた場合に比べて、余分に被害者がお金を受け取ることになります。

しかし、失業保険は失業者の生活の安定を図る社会保障制度の一環であり、被害者に対する損害填補を直接の目的として支給するものではありません。
その証拠に、失業保険法には、たとえ失業が第三者の加害行為に起因する場合であろうとも、失業保険を支払った政府に、加害者宛の損害賠償請求権を代位取得して保険給付額の償還を求めることができるという条項は存在しないのです。

結果、失業保険金は損益相殺の対象にならず、被害者は加害者からの休業損害と、国からの失業保険金の両方を受け取ることができるとされています(福井地裁1973/12/24交民集6巻6号1937頁、神戸地裁1970/11/18交民集3巻6号1788頁、東京地裁1972/8/28判時690号67頁)。

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菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

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弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

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