独り暮らし無職の高齢女子の交通事故被害、家事労働は賠償される?

Question

福岡県久留米市の横断歩道を歩いていた78歳の母がクルマにはねられ、遷延性意識障害の重体のまま、症状固定と診断されました。
子供は全て別世帯で独立し、母は父に先立たれたあと、年金で1人暮らしをしていました。
相手損保から金額提示を受けたのですが、慰謝料や介護費用の項目はあったものの、休業損害や逸失利益の項目は「0円」になっていました。
母の暮らしぶりが無価値であると言われたかのようで「0円」にはとても納得できないのですが?

Answer

家事労働がたとえ現実の収入に結びつかずとも逸失利益や休業損害の対象とされ、主婦でも逸失利益や休業損害を受けることができるという判断は確立しています(最高裁1974/7/19交民集7巻4号960頁)。

さて、日常生活を送るために家事労働をしなければならないのは、複数で暮らしていようと1人暮らしであろうと近似しています。
その点に配慮して、78歳の1人暮らしの年金暮らしの女子高齢者が2級相当の高次脳機能障害になってしまったケースで、家事労働について休業損害と逸失利益の発生を肯定した裁判例があります(東京高裁2003/10/30判時1846号20頁)。

あるんですけれども、しかし、実務趨勢の多くは、1人暮らしの無職の女子高齢者には休業損害と逸失利益は発生しないというスタンスをとっているようです(交通3庁共同提言判タ1014号、交通事故赤本2003年版鈴木順子裁判官講演録、名古屋地裁2004/6/25交民集37巻3号798頁、最高裁ウエブサイト2013/7/5、神戸地裁2007/9/10自保ジ1737号22頁、大阪地裁1997/7/24交民集30巻4号1028頁、神戸地裁2014/4/30自保ジ1924号43頁)。

その理由として《家事労働が財産的価値あるものとして金銭補償の対象となるのは、ひとえにそれが他人のために行う労働だからであり自分自身のためにだけこれを行う場合には財産的価値あるものと評価できないから》と引用されています。

ですから、独り暮らしで無職の女子高齢者の場合に、家事労働に関して休業損害や逸失利益を請求するのは、他の人に家事代替をやってもらい実費が発生するなどの場合を除けば、残念ながら実務趨勢からは難しいと思われます。

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