異時の複数事故で同一部位を負傷したときは?

 

ここに質問タイトル

Question

 2019年4月に福岡市西区を車で走行中に追突される第1事故に遭いました。第1事故で頸椎捻挫と診断されました。
 加害者が加入していたA損保で治療費を一括対応してもらっていた2週間後の2019年5月に年号が変わったとき、福岡市東区をタクシー後部座席に乗って移動中に激しく追突される第2事故に遭い、第1事故で負傷していた頸椎捻挫の具合が悪化しましたので、第2事故に遭遇した日の翌日から治療費の一括対応をB損保に切り替えました。仕事は何とか休業せずにやり過ごしました。
 第2事故に遭遇してから8か月後に症状固定と診断されましたが、なお症状が強く残っています。これら交通事故での後遺症申請はどこにどういう風にすればよいですか?
 また、第2事故のB損保からは「慰謝料は第1事故に遭っていたことを踏まえいくらか減額させていただくことになります」と言われました。私には第1事故にも第2事故に何の非もないのになんでこういうことを言われるのですか?

Answer 東京地判2011年2月28日交民集44巻1号290頁を参考にしています。

 複数の交通事故が時間も場所も近接せずに発生した場合を、講学上、純粋異時事故と呼びます。
 2つの交通事故で被害者が被った全損害のうち、第2事故に遭うまでの治療費と慰謝料は専ら第1事故に起因するので、第1事故のA損保にしか賠償請求できません。

 他方、第2事故に遭って後の治療費と慰謝料(そのほか休業損害が発生するのがノーマルです)については、第1事故のA損保か第2事故のB損保か、いずれに賠償責任があるのか、簡単に即断できないのが悩みの種です。
 なぜなら、第2事故に遭って後に発生した損害は、第1事故の衝撃による影響と第2事故の衝撃による影響が競合して発生したものというべきで、損害に一体性がありどちらの事故によってどの程度の損害が生じたのか、一見して明らかに区分できるわけではないからです。

 この点、どちらの加害者がその損害を加えたか知ることができないのは普通の共同不法行為の場面(例:玉突き事故のように瞬時に複数事故が発生したケース)と近似しているとして、民法719条1項後段を類推適用し、第2事故に遭って発生した損害の全てを、A損保に請求してもB損保に請求してもどちらでも構わないとする裁判例も少数ながら存在します(名古屋地判1998/12/25自保ジ1316号3頁)。

 しかし、多数の裁判例では、第1事故と第2事故は時間も場所も近接していないから民法719条1項後段を類推適用できないとしています(名古屋地判2014/6/27自保ジ1931号85頁ほか)。

 そして多数の裁判例では、第2事故に遭って後に発生した損害について、寄与度減責、すなわち第1事故のA損保はそのうち何%を賠償し、第2事故のB損保は残り何%を賠償すべきという判定をしています。上記東京地判2011年2月28日の事例では、事故の衝撃の程度から各事故の寄与度を決定することも、第2事故前後の症状の変化によって直ちに決定することも困難として、いずれの寄与度の50%と評価しました。つまり、第2事故以降に被害者に発生した治療費や休業損害や後遺症の損害のうち、その50%しかA損保には請求できず、かつ、残り50%だけB損保に請求できるという判定をしたのです。

 一般的には、交通事故赤本講演録2016年下巻5頁神谷善英裁判官の講演録によれば、各事故の衝撃の程度、各事故直後の症状、第2事故に遭うまでの第1事故の症状推移や治療内容、第2事故に遭って以降の症状推移や治療内容、これらを組み合わせて寄与度減責の数値が決められているようです。

 なお、後遺症申請の際には、たとえ時間と場所が接着していなくても、異時共同不法行為という特殊な扱いをして、自賠支払枠だけ2倍になります。具体的には、後遺症申請の際には第1事故の自賠社と第2事故の自賠社にそれぞれ受理してもらうことができ、例えば14級の後遺障害が認定されたときには第1事故の自賠社から75万円、第2事故の自賠社から75万円と受け取ることができます。
 また、第2事故に起きた瞬間に、第2事故が起きた日以降の治療費や休業損害の一括対応をA損保が打ち切り、B損保が引き継ぐ運用が実務上定着しています。

※寄与度減責の数値は事例ごと裁判官ごとに異なりますので、紹介した裁判例の数値はあくまで一例にとどまり、どんな事案でもその数値で処理されるわけではありません。異時共同不法行為は非常に専門的ですので弁護士への依頼をお勧めします。

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