仮定的代車料を認容した名古屋地裁1996/12/25を入手しました

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平成8年12月25日判決言渡同日原本交付
平成6年(ワ)第1393号 損害賠償請求事件

判   決

原       告       X     
原告訴訟代理人弁護士              大  田  清  則
同               浅  井  岩  根
同               西  野  昭  雄
同               高  柳     元
同               鈴  木  良  明

被       告      Y     
被告訴訟代理人弁護士                山  下  勇  樹

主  文
一 被告は、原告に対し、金228万円及びこれに対する平成5年11月22日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告の被告に対するその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする
四 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第一 原告の請求
   被告は、原告に対し、金722万0131円及びこれに対する平成5年11月22日(本件不法行為の日)から支払済みに至るまでの年5分の割合による金員を支払え。
【訴訟物―不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求権及び民法所定の遅延損害金請求権。】

第二 事案の概要
  本件は、信号機の設置されていない交差点において、直進中であった原告運転の普通乗用自動車と同じく直進中の被告運転の普通乗用自動車とが出会い頭に衝突した事故につき、原告が、民法709条に基づき、被告に対して、原告の自動車の修理費用等の損害賠償を請求した事案である。

一 争いのない事実
1 事故の発生
原告は、次のような交通事故に遭遇した(以下、右事故を「本件事故」という。)。
(一)日 時  平成5年11月22日午後3時20分ころ
(二)場 所  半田市乙川深田町1丁目12番地先の交差点(以下「本件交差点」という。)
(三)被害車両  普通乗用自動車(以下「原告車」という。)
被害車両運転者  原告
(四)加害車両  普通乗用自動車(以下「被告車」という。)
加害車両運転者  被告
(五)事故態様 本件交差点において、原告車と被告車とが出会い頭に衝突した。

2 責任原因
  被告は、安全確認の注意義務違反という過失により本件事故を発生させたものであるから、民法709条に基づき、これによって生じた原告の損害を賠償する義務がある。

二 原告の主張
1 事故態様について
  被告運転の被告車は、原告運転の原告車がセンターライン黄色の片側一車線の優先道路を東進して本件交差点にさしかかったときに、右方の安全確認をすることなく、本件交差点手前で標識にしたがって一時停止することもなく、しかも徐行することなくかなりの速度で、本件交差点内に進入(南方)し、本件交差点に入る直前にあわてて急ブレーキを踏んだものである。
  これに対して、原告は、優先道路を走行中、本件交差点の左側(北側)付近を確認していたが、本件交差点にさしかかるまで、本件交差点の北側付近には被告車の存在はなかったのであり、その後被告車がいきなり本件交差点に突っ込んで来たため、被告車によって原告車は大破したものである。
  このとおり、被告には著しい重過失が存するのに対して、原告には何らの過失の要素はないのであるから、その過失割合は、優先車である原告0、劣後車である被告が10割である。

2 原告の損害について
(一)車両修理代金   金188万1531円
(二)格落ち損等    金231万8600円
(中古車市場価格×1・03+取得税+登録諸費用)―(事故車修理後査定価格)
(三)代車料      金172万円   2万円×86日分
(四)無形の損害     金30万円(慰謝料を含む)
(五)弁護士費用    金100万円

三 被告の主張
1  事故様態について(過失相殺の主張)
  本件事故は、本件交差点前にて標識にしたがい被告車が一時停止をし、右方を並木越しに見たところ、遠方に原告車を認めたが、通過できると思い、被告車の直前を左方から右方へ走行してきた自転車をやり過ごしてから、今度は右方を確認することなく、ゆっくりと南進しはじめたところ、折から相当な速度で東進し、被告車を認めつつ、ハンドル操作のみでかわせると軽信して、そのままの速度で走行してきた原告車と、原告車の対向車線上センターライン付近で被告車の左前部と原告車の左後方側面とが衝突したものである。
  したがって、本件事故は、被告の右方安全確認義務違反の過失にも起因するが、原告にも前方安全確認義務違反及び安全運転義務違反の過失があり、その過失割合は、原告が5割、被告が5割とするのが相当である。
2 原告の損害について
(一)車両修理代金について   
  原告車の右前部(右フェンダー部)の損傷は、本件事故後修理工場に搬入する際、修理業者の過失により、修理業者の事務所側面に衝突させて損傷したものであり、本件事故による損傷ではない。これを除いた本件事故による原告車の損傷の修理費用は、金135万1658円である。
(二)格落ち損等について
  原告車の経年性、利用状況、また、本件事故時の原告車の状況、評価損の考え方からすれば、本件ではおよそ原告車の評価損は認められない。
(三)代車料について    
  原告には、自宅に置いてある、原告とその両親で運営する会社所有の車両が存在し、原告車の修理期間中、原告はその車を利用していた。また、原告は、実際に代車を借り受けていない。 したがって、原告には代車料は認められない。
(四)無形の損害について   
  その根拠が明らかではなく、認められない。

四 本件の争点
  被告は、まず本件事故の様態を争い、次に、原告主張の各損害額をそれぞれ争い、さらに、本件事故の責任は原告にもあるとして、前記のとおりの過失相殺を主張した。

第三 争点に対する判断
一 原告の損害について
1 車両修理代金について(請求額金188万1531円)
                                   認容額 金160万円
   争いのない事実及び証拠(甲第4号証、乙第1号証の1ないし6、乙第2号証、証人A、証人B、弁論の全趣旨)によれば、原告車は、本件事故(被告車との衝突)により損壊したことから、その修理をしなければならなくなり、本件事故と相当因果関係を有する原告車の修理費用は、金160万円の限度で認めるのが相当である。

2 格落ち損等について(請求額金231万8600円)                                 認容額 金30万円   
  争いのない事実及び証拠(甲第5ないし甲第7号証、甲第26号証、乙第4号証、証人C、証人B、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、原告車は、平成4年5月22日新規登録の車であって(本件事故までに約1年6か月使用)、本件事故当時までに約3万3000km走行していることが認められ、この事実を前提にすると、本件事故と相当因果関係を有する原告車の修理にともなう格落ち損については、金30万円の限度で認めるのが相当である。

3 代車料について(請求額金172万円)          
                      認容額 金40万円   
   証拠(証人A、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、本件事故と相当因果関係を有する原告の代車料相当の損害は、金40万円であると認めるのが相当である。
4 無形の損害について(請求額金30万円)         
                                 認容額 0円   
  原告の本件事故による損害については、上記1ないし3の物的損害の賠償で十分であって、その余の精神的損害等を認めるべき特別の事情は認められない。  
よって、無形の損害の主張は理由がない。

二 本件事故の態様及び過失割合について
  前記の争いのない事実に、証拠(甲第1ないし甲第3号証、甲第10ないし甲第12号証、乙第3号証、原告本人、被告本人〈それぞれ採用しない部分を除く。〉、弁論の全趣旨)を総合すると、次の各事実を認めることができる。

1 本件事故現場及び本件交差点付近の状況としては、 本件交差点は、原告が西から東に向けて走行していた片側一車線の道路(その片側車線の幅員は2・9mで、0・7mの路側帯があり、アスファルト舗装の道路である。また、路側帯の北側には2・4m幅の歩道が設けられていること。以下「東西道路」という。)と、被告が北から南に向けて走行していた中央線の敷設されていない道路(その全体の幅員は5・0mで、アスファルト舗装の道路である。以下「南北道路」という。)とが交差し、信号機による交通整理の行われていない交差点であること、その本件事故現場付近の道路規制としては、東西道路の制限速度は毎時40kmであり、はみ出し通行禁止の規制がなされていたこと、他方、南北道路の規制としては、被告の走行してきた南北道路から東西道路の出口である本件交差点においては一時停止の規制がなされていたこと、さらに、本件交差点付近の状況としては、被告の走行していた南北道路の一時停止線のある付近から見た右方向(すなわち、原告車が走行してくる方向)の見通しとしては、前記の歩道部分には電柱や街路樹があり、さらに、歩道北側の民家との間には高さ2mのブロック塀が設置されていることから、その見通しはよくないこと、
2 本件事故の態様としては、 被告は、被告車を運転して本件交差点にさしかかった際に、本件交差点の手前で自車の前方を横断する自転車一台をやり過ごした後、前記のとおり本件交差点の右手方向はその見通しがよくないのに右方の安全確認をすることなく、しかも、本件交差点手前でほとんど一時停止することもなく、本件交差点に進入(南進)し、本件交差点に入る直前にあわてて急ブレーキを踏んだものの、原告車と衝突したものであること、 これに対して、原告は、原告車を運転して、時速40~50kmで東西道路を走行中、前記のとおり原告から見ても本件交差点の左手方向(被告車が進行してくる方向)はその見通しがよくないのに、左方の安全確認をすることなく、本件交差点に進行したことから、前記のとおり原告車は被告車と衝突したものであること、

  以上の1及び2の各事実が認められ、この認定に反する原告本人及び被告本人の各供述は、前掲の各証拠に照らしていずれもこれらを採用できない。

3 そこで、まず、被告の過失を検討するに、 南北道路から見て、東西道路の原告車が進行して来る側の見通しはよくなかったのであるから、被告は、本件交差点を走行して直進するに際しては、その道路標識にしたがって一時停止をしたうえで、東西道路の特に右方を注視して、東西道路を走行して来る自動車の有無などその安全を十分に確認して進行すべき注意義務があったのに、これを怠ったという過失があること、
4 これに対して、原告の過失を検討するに、 本件交差点は、原告から見てもその左方の見通しはよくなかったのであるから、原告は、東西道路を走行するに際しては、その左方を注視して、または、十分に減速するなどして、南北道路からの自動車の有無などその安全を十分に確認して走行すべき注意義務があるのに、これを怠ったという過失があること、
   以上3及び4の認定判断に反する原告本人及び被告本人の各供述は、前掲の各証拠に照らしてこれらを採用できない。

三 過失相殺について
  前記二で認定の各事実及び認定判断によれば、本件事故は、前記認定の被告の過失と原告の過失とが競合して発生したものといわざるをえない。
  そして、前記認定の諸事情に徴すると、本件事故における被告車と原告車との過失割合については、被告車(被告)が9割、原告車(原告)が1割と認めるのが相当である。

四 具体的損害額について
  そうすると、前記一で認定のとおり、本件で原告が被告に対して請求しうる損害賠償の総損害額は合計230万円となり、前記三の過失割合による過失相殺をすれば、原告の具体的な損害賠償請求権は金207万円となる。
五 弁護士費用について(請求額金100万円)
                             認容額 金21万円
  本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は、金21万円と認めるのが相当である。
六 結論
  以上の次第で、原告の本訴請求は、金228万円及びこれに対する本件不法行為の日である平成5年11月22日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
名古屋地方裁判所民事第3部 裁 判 官     安  間  雅  夫


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