損益相殺
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損益相殺
交通事故で幼い子供を亡くしました。
結論を先に申しますと、死亡事故で子供の逸失利益を算定する際、子供の養育費を支出する必要がなくなったからといって、将来の支払を免れた養育費の分を損益相殺されることはありません(最高裁1978/10/20判タ371号60頁)。
実は最高裁でも、全裁判官が一致して結論を出したわけではありません。
反対意見の裁判官は「交通事故当時の子供はまだ稼働能力を持たない未完成の状態にあるわけで、稼働能力を持つ大人になるまでの必要経費である養育費を全く考慮しないのはおかしい。」と主張していたのです。
しかし、多数意見は「反対意見には一応の説得力はあるけれども、養育費と逸失利益との間には損益相殺を許容できるだけの利得と損失の同一性が見当たらないし、そもそも養育費の支出主体は扶養義務者である父母であり逸失利益の喪失主体である幼児とは人格を異にするから損益相殺の前提を欠く」などと、反対意見を押し切って前出の結論に至ったわけです。
最高裁判例からは、同じ1個の事件に遭遇したときの、裁判官個人個人の価値観の違いが読み取れることがあり、興味深く感じます。