交通事故Q&A

過去の免停歴や罰金歴を慰謝料の増額理由にできる?

  • 更新日:2016.8.8
  • 投稿日:2016.8.7

過去の免停歴や罰金歴を慰謝料の増額理由にできる?

Question

 夜に国道3号線の右側車線をバイクで直進して信号機のない交差点を通過しようとしていたとき、前方の左側車線を走行していたクルマが合図なしで転回を開始したため、避けきれずクルマにぶつかって右上腕骨近位端骨折などの怪我をこうむり、右肩関節の可動域制限という後遺症が残りました。
 警察の調べで、クルマの運転手はこの交通事故の1年半前にも、人身事故を起こして60日間の免許停止の行政処分と30万円の罰金刑を受けていたことが判明しました。
 にもかかわらず、今回も転回禁止場所で転回するという走行ルールを無視する暴挙に踏み切っており、誰の目からも懲りない人物というほかありません。
 私に過失がないのは当然として、こんな悪質な運転の被害者となったわけですから、通常のケースに比べて慰謝料を割り増しで支払ってもらいたいのですが?
 

Answer

 昭和61年の小林和明裁判官の交通事故赤本講演録では、加害者にひき逃げ・無免許運転・酒酔い運転・信号無視などの故意に匹敵する重過失がある場面では、慰謝料の割り増しに異論はないだろうと指摘されています。
 そう扱うべき理由として、加害者が故意重過失によって交通事故を引き起こした場合、被害者が激しい憤りを感じ、加害者に対する厳しい制裁を期待することは当然であって、
それがゆえに被害者の憤怒や怨恨を消去軽減する目的で支払われる慰謝料算定にあたっても、その事情を汲んでしかるべきと説明されています。

 ところで、Qのような加害者の事情が、慰謝料割増理由に含まれるかどうかが、東京地裁2006/11/27自保ジ1715号15頁で争われたことがあります。
 裁判官は、特に理由を示さず、当該交通事故の1年半前に免停処分歴と罰金歴があったことは直ちに慰謝料増額理由には該当しないと説示しました。

 推測ですが、ひき逃げや無免許運転や酒酔い運転や信号無視という違法行為がなされた瞬間はまさに当該交通事故自体と時間的に近接し密接な関係がうかがわれるため慰謝料を増額するのが当然であると評価したのに対し、1年半前の免停歴や罰金刑歴は、普段から交通ルールを順守しない人物であることをうかがわせる意味は持っていても、時間的に当該交通事故との密接な関係につながるものではないので慰謝料増額の根拠とするには弱いと解釈されたのかもしれません。

 ただ感覚的には、いくら過去の出来事といっても、当該交通事故との時間間隔やその過去の違反の程度によっては、慰謝料増額要素として斟酌することがむしろ妥当ではないかと感じるところもあります。

 交通事故(人身被害)に遭われて、正当な慰謝料を獲得したい!とお考えの方は、お気軽に豊富な解決事績を誇る、交通事故に強い福岡の菅藤浩三弁護士にご相談ご依頼ください。

菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

当サイトでは、長年の経験と実績を持つプロの弁護士だからこそ書ける、信頼性の高い一次情報などを発信しています。

弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

ページトップ