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自動車を運転中、追突事故に遭いました。
賠償実務において、交通事故にあった被害者に後遺症として補償対象となるPTSD(心的外傷後ストレス障害)が発生することは一般的な出来事なのだろうかをめぐって、複数の裁判例が蓄積され、活発に議論されてきました。
現在の裁判例の傾向としては、一般に交通事故でPTSDの発症を認めることにはかなり消極的ですので、正直、Qのような症状があっても、後遺障害があるという認定を受けることは容易ではないでしょう。
しかし、Qのような症状はただの気のせいや思い込みにとどまる一時的なものとは限りません。交通事故をきっかけに、一種の心的外傷(不安神経症)にかかってしまっている可能性があるからです。
種類は違いますが、よく知られている不安神経症は高所恐怖症や閉所恐怖症です。また、不安神経症の中で、不安のため突発的な発作を繰り返す症状をパニック障害と呼びます。
不安神経症にかかった患者によく見うけられる症状は、慢性的な不安・緊張・落ち着きのなさ・イライラ・集中困難・眠りが浅い・寝つきが悪いといった精神症状のほか、肩こりや首のこり・頭痛・震え・動悸・呼吸困難・めまい・頻尿・下痢・疲れやすいなど、肉体症状に及ぶこともありまさしく多様です。
不安神経症の原因は何かについて、脳内ノルアドレナリン系の過敏・セロトニン系の機能不全のほか、過労や睡眠不足や風邪などの身体的な悪条件、さらには心配事など日常生活における精神的ストレスなど、これまた複合的な要素が唱えられています。
交通事故も原因の1つからは除外されていないのですが、これらの要素のうち、どれが不安神経症の決定的要因になるのかという特定までは医学的になされていません。
原因が特定できないことと関連しますが、前述のような症状が継続するにもかかわらず、尿検査・心電図検査・血液検査・呼吸器検査・脳波検査などの理学的検査では特別な異常数値が認められないのが、不安神経症の特徴といえます。
不安神経症の治療方法には薬物療法と精神療法を併用するのが普通です。
薬物療法には、抗不安薬(セルシンやセディール)や抗うつ薬(SSRI)がよく用いられているようです。
精神療法では、カウンセリングなどで自分の考え方の癖(認知の歪み)を意識させ修正していく認知行動療法などが用いられたり、EMDR(患者に事故のことを思い起こしてもらいながら、医師が左右に一定の速度で動かしている指を患者が目で追いかける技法)が用いられたりします。
そのほかの治療方法として、気分転換に深呼吸を意識して繰り返し筋肉の緊張を和らげるリラックスをとりいれるとか、公園の散歩やプール歩きなど軽い有酸素運動を取り入れることも有効という指摘もあります。
不安神経症の回復期間には個人差があることが医療の臨床現場から指摘されています。
さらに、回復期間やその度合には、事故によって被った身体的怪我の回復度合・刑事事件や民事賠償の処理の遅速・復学や復職などの経済問題が関係するとも指摘されているようです。
交通事故の被害者は不安神経症の治療期間の見通しが不透明なことから、つい悲観的な物の考え方にとらわれてしまい、「病は気から」ではありませんが、かえって症状が長引いてしまうこともあるようです。
思い当たりのある患者は、焦らず諦めず、心療内科や精神科といった不安神経症の専門医の門をたたいて、根気よく治療を続けていくことがよいでしょう。
この場合、ドクターショッピング(当てもなく医師や病院を渡り歩くこと)や民間療法や健康食品への過度な依存を控えることに注意し、そして、症状が完全に消失していなくても少しでも改善したときはそのことを前向きに評価して共存していく考え方を持っていくことも必要でしょう。
交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。