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死亡事故なのに加害者は罰金どまり。軽すぎるのでは?

  • 更新日:2023.12.11
  • 投稿日:2016.4.24

死亡事故なのに加害者は罰金どまり。軽すぎるのでは?

交通事故、死亡事故、弁護士相談イメージQuestion
信号機のない交差点で、横断歩道を歩行していた夫が、前方不注視のクルマにひかれる交通事故にあい亡くなりました。夫には何の非もありません。
損害賠償交渉の途中で、加害者は罰金で済んだという話が入りました。
「人を殺したのに罰金を支払って罪を償ったことになる」、そんなの余りに軽すぎませんか?

Answer
「保険会社からお金が払われても加害者の懐はいたんでいず、普通に暮らしていることに納得がいかない。人の命を奪った加害者は当然刑務所に送ってほしいのに。。。なぜ罰金どまりなのか??」、
こういうお嘆きをご遺族からよく耳にします。

交通事故(死亡事故)で人身被害が生じたときの刑事事件の基本的な流れ

まず、交通事故で人身被害が生じたときの刑事事件の基本的な流れを説明します。

  1. 警察による捜査(現場状況確認、現場写真撮影、運転者や目撃者などからの事情聴取。速度が問題になっている場合には鑑定ほか)が行われます。
  2. 警察が検察庁に送致します。捜査不足があれば補充捜査をするよう検察庁から警察に指示します。
  3. 検察庁で、公判請求・略式起訴(罰金)・不起訴のどれにするかを決めます。
  4. 公判請求の場合に限り、公開の法廷で刑事裁判が開かれ、裁判官が無罪・罰金・執行猶予・実刑(刑務所行き)のどれにするかを決めます。

交通事故(死亡事故)犯罪の量刑について

Qの場面というのは、3のところで『検察庁が公判請求も不起訴も選択せず、略式起訴を選択した』ことを意味します。
日本の刑事法制では、起訴権限を検察官だけに独占させ(刑訴法247条)、かつ、犯罪の軽重や情状を考慮して、公判請求するか、略式起訴するか、不起訴にするかを選択できる広い裁量権を検察官に与えています(刑訴法248条)。

そして、日本の刑事政策の中で、交通事故犯罪については、時代につれて寛刑化(≒罰を軽くする)の傾向がうかがわれ、それは統計数字からもハッキリ読み取れます。
例えば、平成7年の犯罪白書に、『業務上過失致死傷罪での検挙人数約67万7000人のうち、公判請求4794人(そのうち実刑752人・執行猶予3830人・罰金115人・無罪5人)・略式命令9万0228人・不起訴53万6831人』という数値が掲載されています。
業務上過失致死傷罪による検挙人数を1万人に変換しますと、不起訴8420人・略式命令1496人・実刑13人・執行猶予70人という割合になります。
交通事故で正式な裁判が開かれる割合がものすごく少ないと思われたのではないでしょうか。

交通事故(死亡事故)犯罪の寛刑化の傾向を支持する4つの理由

犯罪白書には刑事政策の方向として寛刑化の傾向を支持する4つの理由があげられています。

Ⅰ、クルマ社会の現在、国民の多数がいつ交通事故加害者になるか分からない時代であり、もし厳罰化を進めるときは国民の多数が刑事罰をおそれながらクルマを運転して暮らさなければならなくなったり、一瞬の不注意で社会生活を根底から変更する事態になりかねない。これは刑罰の在り方として適当とは考えがたい。
Ⅱ、任意保険制度が高い割合で国民の間に普及しており(平成23年時点での任意保険加入率は全国平均73・4%)、加害者を刑事罰で起訴せずとも他の犯罪と異なり治療費や休業補償など民事賠償が充実しているため、被害者が納得し、処罰感情がやわらぐ傾向がより強い。
Ⅲ、交通事故の防止は刑事罰のみならず、行政の規則や制裁を含めた総合的な対策で達成されるべきであり、刑事罰のみを厳罰化するやり方は偏っている。
Ⅳ、仮に不起訴率を低め罰金率を高めても、お金で済ませることで刑事罰に本来期待されている感銘力が薄まるので、刑事司法全体を国民が軽視する風潮を招きかねない。

むろん上記Ⅰ~Ⅳの理由に対しては、実際に交通事故で家族を失った遺族からの反論も寄稿されています。
ただ、先ほど挙げた数値から読み取れるとおり、驚かれるでしょうが死亡事故であっても罰金にもならず不起訴で終わる事件も少なくないのが現状なのです。

検察官が選択した手続を、被害者や遺族からの申し出により変更させることは可能なのか

次に3で検察官が選択した手続を、被害者や遺族からの申し出により変更させることは可能なのかについて説明します。

例えば、①「罰金刑では不満だから正式起訴してほしい」と、変更させる法律上の権利は被害者には与えられていません。ですから、Qのケースでは被害者はどうにもしようがありません。
これに対し②「検察官の不起訴は不満だから、起訴にかえてほしい」と被害者が変更を申し出る権利や手続は用意されています(検察審査会制度)

その検察審査会では、各地の民間人が会議して、検察官の不起訴に対し「起訴相当」「不起訴相当」「不起訴不当=検察官による追加捜査をうながす」を決議するのですが、司法統計では「起訴相当=1・5%」「不起訴不当=9・6%」と不起訴を覆すべきとする議決が検察審査会で出される確率も正直高くないのが実情です

従って、交通事故被害者が弁護士に依頼するときは、加害者を刑事罰で厳しく処罰させてほしい」という感情をお持ちでしょうが、弁護士への依頼内容をそれと切り離して、もっぱら「被害者のために支払われるべき賠償金をより多く獲得すること」にお気持ちを整理してご依頼いただくことが望ましいです。
そここそ、弁護士が交通事故被害者のためにもっとも力を注げる場面だからです。

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  • 日々情報更新中

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    論文集の数行の記載から裁判例を探り出して、自己の主張の根拠づけに利用したことは何度あるかわかりません。

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