危険運転致死傷罪に該当する、高速とか未熟な運転はどんな運転?

危険運転致死傷罪に該当する、高速とか未熟な運転はどんな運転?

Question

私の夫は福岡県鞍手郡小竹町の県道62号線をバイクで走行していました。夫が事故にあった区間の制限速度は40kmとなっていました。その道路は夫の進行方向から見て右側にカーブしているのですが、相手のクルマは対向方面から時速80kmの高速という危険な運転でカーブに進入してきたため、道路のカーブに沿って曲がることができず、センターオーバーして夫のバイクに正面衝突する交通事故が起きたのです。
夫は亡くなり、相手は全治2カ月の大けがで入院したものの命は拾ったようです。制限速度を大幅に超過してカーブに進入しあげくにセンターオーバーするなんて、とんでもない危険運転です。普通の自動車運転過失致死罪で罰せられるなんてとても納得できません。
高速運転をして人身事故を起こした場合、危険運転致死罪という重い刑罰が科せられると聞きました。この相手も危険運転致死罪で厳しく罰してほしいと検察庁に告訴したいのですが、危険運転致死罪を適用してもらえるのでしょうか。

Answer

まずご主人のご冥福をお祈り申し上げます。
自動車運転行為処罰法2~3条に、危険運転致死傷罪の犯罪類型が設けられています。
2条1号と3条1項はアルコール又は薬物による酩酊又は準酩酊運転・2条4号は通行妨害目的運転・2条5号はことさら信号無視運転・3条2項は特定病気運転を危険運転と扱っています。
お尋ねになられているQのケースは、2条2号の『進行を制御することが困難な高速度』で自動車を運転させる行為に該当するのではないかというご質問かと思います。

この『進行を制御することが困難な高速度』という構成要件の内容については、[刑法の一部を改正する法律の解説]法曹時報54巻4号33頁~に示されている解釈が通説とされているようです。

『進行を制御することが困難な高速度』とは、例えば、一般的類型的に、そのような速度での走行を続ければ、車両の構造や性能など客観的事実に照らし、あるいは、ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになると認められる速度での走行をいい、そのような速度であるか否かの判断は、基本的には具体的な道路の状況すなわちカーブや道路の状態に照らして判断されると示されています。

Qのケースに適用すると、そのカーブを時速80kmで曲がると、ほとんどのクルマが自車線内にとどまっての走行ができずセンターオーバーしてしまうかどうか(工学的には限界旋回速度を超過しているかどうかという言い方をします)という観点から、危険運転致死罪を適用すべきかが個別具体的に判断されるのです。

裁判例でも、個別具体的に道路状況や限界旋回速度を検証して、危険運転致死傷罪の適用を判定しているようです。
・制限速度50kmのカーブを時速90kmで走行させてセンターオーバーしたケースで限界旋回速度に達していたとして危険運転致傷罪を適用した判タ1375号246頁
・制限速度40kmのカーブを時速100kmで走行させてセンターオーバーしたケースで限界旋回速度に達していたとして危険運転致傷罪を適用した判タ1108号297頁
・2つの連続する橋梁で隆起している制限速度60kmの道路を時速90kmで走行したため空中で跳ね上がってコントロール不能となったケースで道路の状況に照らして危険運転致死傷罪を適用した判タ1352号252頁
・制限速度40kmのカーブを時速70kmで走行させてセンターオーバーしたケースで限界旋回速度を時速13kmも下回っており時速70km程度であれば一般に高速度とは言えないとして危険運転致死傷罪の適用を否定した判タ1159号118頁
・意図をもってドリフト走行した場合であっても、ドリフト時に限界旋回速度である時速42・1kmを上回って走行していたとは認定しがたいと危険運転致死傷罪の適用を否定した判タ1419号216頁

なお2条3号に『進行を制御する技能を有しない』で自動車を運転させる行為という構成要件の内容についても同様に法曹時報54巻4号33頁に通説の解釈が示されていますので、ここで紹介させていただきます。

『進行を制御する技能を有しない』とは、ハンドルブレーキなどの運転装置を捜査する初歩的な技能すら有しないような、運転の技量がきわめて未熟なことをいうもので、具体的には運転免許を有していないにとどまらず、それまでの運転経験・事故前の運転状況・当該事故の態様などを総合考慮して判断すると示されています。

京都府亀岡市で集団登校の小学生の列に、無免許運転の暴走車両が突っ込んで多数が死傷した事故で、危険運転致死罪の適用が見送られました。
その理由の1つに、運転していた加害者は無免許運転を繰り返していたため、一定の運転技量はあったと言わざるを得ないという判断がなされたからと聞いています。

危険運転致死罪の適用がかくも限定的ならば、自動車運転過失致死罪の量刑運用をいまよりも柔軟にして被害者の期待に応えてもらうことを刑事裁判官や検察官に願い出ることが現実的な方策と言えるでしょう。

大切な方が交通事故(人身被害)で亡くなられてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

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