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センターオーバーで正面衝突されても、常にゼロ過失とは限らない

  • 更新日:2026.8.20
  • 投稿日:2026.8.20
Question

 福岡県嘉麻市の中央線のある片側一車線の登り道を乗用車で走行中、私からみて左に曲がるカーブに差し掛かるとき、対向方面から下ってやってきた大型トラックがカーブでふられて、大型トラックの右後部が中央線を1mはみ出してきたため、大型トラックの右後部に私のクルマの前部があてられました。大型トラックが1mはみだしたことは地面に落下した部品の散らばり具合から特定されています。
 カーブに差し掛かる前に特に減速はしませんでしたが、私の乗用車が中央線をはみ出て走行した瞬間は一度もありません、なのに相手損保はセンターオーバーしていない私にも幾らか過失があると言ってきました、とても納得できないのですが?

Answer

 神戸地判2018/12/10自保ジ2041号142頁をモデルにしています。
 結論から言うと、神戸地判2018/12/10では、乗用車の運転手に15%もの過失アリと認定しました。センターオーバーしていないにもかかわらずです。

 たしかに、大型トラックの運転手には、自己の車両後部を対向車線に進入させた過失があり、その責任度合は相当に大きい。
 しかし、乗用車を登って運転している者についても、対向車線が下り道であることから、カーブを走行する際に中央線をはみ出して走行してくる車両があることは十分予見でき、にもかかわらず、速度を落とさずにカーブに入っていることに照らすと、乗用車もまた前方を注視し適切にハンドルやブレーキを操作する義務を怠っていたため、衝突事故を起こした過失があると言わざるをえない。
 加えて、大型トラックの長さや事故現場付近の道路幅に照らすと、もともと大型トラックがカーブを曲がる際にある程度中央線をはみ出さざるを得なかったことも考慮して、上記15%の過失を乗用車に課した、こういう内容です。

 そもそもですが、センターオーバーしてきた加害車両のセンターオーバーされた被害車両との基本の過失割合は別冊判タ38号【150】でも加害車両100:被害車両0と基本割合を設定されています。
 その理由は、車両は道路中央または中央線から左の部分を(道交法17条4項)、道路の左側に沿って(道交法18条1項)、通行しなければならないところ、そのルールは自動車運転手にとって信号遵守と同じくらいもっとも基本的ルールであるからというものです。

 たとえば、直線道路で片側1車線を運転して走行中、加害車両が対向車線からセンターオーバーしてきたため、回避しようと右にハンドルを切った所、あいにく加害車両もまた左にハンドルを切って向かってくる格好になったため、衝突した事案で、加害者が「相手もまた、警笛を鳴らしたりブレーキを踏んだりして別の方法で衝突を回避することが容易だったのだから、過失相殺を適用すべきだ」と主張したのに対し、ドラレコの画像から被害車両の退避行動に責められるべき点はなく過失は専ら加害車両にあるとした東京地判2021/6/18自保ジ2104号119頁、カーブ付近で対向してくるバイクがセンターオーバーしてはみ出してくることを予見する義務は被害車両にはないとして被害車両の過失をゼロとした京都地判2007/12/6自保ジ1751号8頁、これらは別冊判タ38号の基本的考え方をピッタリ適用した裁判例です。

 ただし、別冊判タ38号283頁には「中央線が表示されていず、車両の行き違いはできるもののあまり幅員が広くない道路では、運転者が遵守すべき規範の明白さに差異があり、左側を通行している車両と言えども、対向車両の進路動きに対する相当の注意が要求されてしかるべきであろう」と言及されています。

 紹介した神戸地判2018/12/10のほかにも、片側1車線の時速30km制限の山間道路のカーブ地点で、対向してきた大型貨物自動車にセンターオーバーで衝突された乗用車運転者に対し、大型貨物自動車のセンターオーバーはわずかであること、道路があまり広くないため車幅の大きい大型貨物自動車が道路の左端に寄ってもその右前端が中央線に接近しこれを超えることがあってもやむを得ない面はあったこと、車幅の小さい乗用車が道路の左側に寄って接触を回避することは容易であったこと、乗用車は制限速度を20km以上超過していたこと、これらの理由から乗用車に20%過失ありとした大阪地判2021/10/27自保ジ2114号166頁もあります。
 こちらも100対ゼロの例外に該当すると判断された事例です。

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菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

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弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

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