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Q:福岡県三潴郡大木町に住む30代女性です。結婚式を6日あとに控えていたのですが、夫となる彼が自転車で交差点を横断しているときに、左からやってきた自動車にはねられて、骨盤骨折で入院することになりました。
とても彼は結婚式や新婚旅行に行けそうにないです。結婚式だけでなく新婚旅行も彼と一緒に動いてこそ意味があるもので、挙式披露宴は1人であげられませんし、新婚旅行も1人で行っても何の思い出づくりにもなりません。
私は怪我していないのですが、彼が来れないならば新婚旅行もそろってキャンセルするつもりなのですが、6日あとのことなのでキャンセル料が2人ともかかってしまいます。この2人分のキャンセル料は相手損保に請求できるのでしょうか?
A:結婚式や新婚旅行が間近に迫っているのに、さぞおつらい目にあいましたね。
大阪地判2004/12/7自保ジ1605号2頁を参考にしました。この案件では、挙式披露宴とその直後の新婚旅行のキャンセルでなく日延べのかたちをとり、日延べのために余計にかかった料金並びに挙式披露宴を日延べすることになったそれ自体に対する慰謝料を相手損保に請求しています。
大阪地判2004/12/7は、日延べにかかった新婚旅行のキャンセル料を賠償対象にすると認定しました。判旨には明確に被害者1人分なのか夫婦2人分なのか記されていませんが、普通は直後の新婚旅行を日延べするときにペアの片方だけ日延べすることはないでしょうから(揃って行く形にしないと日延べの意味がない)、夫婦2人分のキャンセル料の補償を認容したと読むべきでしょう。
なお大阪地判2004/12/7で相手損保は「交通事故による挙式披露宴や新婚旅行の延期は特別損害にあたる。加害者はそういう特別事情を予見できないのだから、特別損害として賠償義務はないはず」と抵抗しましたが、判旨は、結婚式を間近に控えた者が交通事故に遭えばこの手の損害が発生することは通常ありうることだから特別事情に該当しないと一蹴しました。
思い起こすに、交通事故は全国で毎日のようにたくさん起きており、その被害者の中には、たとえば妊娠中という人も珍しくないでしょうし、挙式披露宴がごく近接しているという人も珍しくないはずです。また多くの人がこれだけ海外や国内の旅行に行くことが珍しくなくなったいまでは、新婚旅行に限らず旅行の日程がごく近接しているという人だって珍しくないはずです。
かように、交通事故と近接した日に旅行を計画している人は珍しくないですし、その旅行が新婚旅行のようにペアで移動しなければ意味がないに等しい場合であることも特別な事象ではないわけですので、そう考えると、新婚旅行のキャンセル料は怪我した被害者単独にとどまらずカップル2人分が是認されてしかるべき損害と弁護士菅藤も同様に考えます。
そのほか被害者が即入院手術となる重傷になったために被害に遭っていない家族3人を含めた4人分の旅行キャンセル料金を賠償対象とした東京地判2000/10/4交民集33巻5号1603頁もありますが、これは残り家族3人が怪我してないとしても怪我した被害者をほおって病院に留め置き3人だけ旅行に行くという選択は普通しないレベルの重傷だったということも加味したと思われます。
さらに、被害者の同乗者と一緒に1か月後にハワイ旅行に行く予定を入れていたが、交通事故に遭遇したために同乗者と2人分のハワイ旅行キャンセル料の賠償を命じた東京地判2003/9/2交民集36巻5号1192頁もあるのですが、同乗者が怪我したかどうか、同乗者と被害者の関係が夫婦なのか何なのか判旨では全くわからないので、同乗者と2人そろってハワイ旅行をキャンセルする必要性相当性に疑問を呈せざるを得ない事案のため、果たして菅藤の私見を支持するに足りる判例とは言いにくい印象です。