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原告Xは、Xの妻A所有で自ら運転する自動車との間で2014/7/2発生した第1事故(相手方はY1)と、Xの知人B所有で自ら運転する自動車との間で2014/7/30発生した第2事故(相手方はY2)について、第1事故はAから物損請求権を譲り受け、第2事故はBから物損請求権を譲り受けたということで、弁護士を雇って訴訟を提起しました。
Y1及びY2の弁護士は、XA間の債権譲渡、XB間の債権譲渡は信託法10条で禁止されている訴訟信託に該当するので、Xを原告とする請求は認められないとの抗弁を主張しました。
福岡高判2017/2/16判タ1437号105頁は、Y側に軍配を上げXの請求をいずれも棄却しました。
訴訟信託とは訴訟をさせることを主たる目的として、財産権を移転し受託者に財産権の管理処分をさせることを意味しますが、信託法10条はこの訴訟信託を禁止しています。
訴訟信託を禁止する理由は、弁護士代理の原則の回避防止・法律ゴロのような悪質な三百代言の活動の防止・濫用的な訴訟提起の防止にあるのですが、本件ではXは弁護士を代理人に据えているため、弁護士代理の潜脱や法律ゴロの活動であると評価する余地はありませんでした。
従って、信託法10条の文言上《その債権譲渡は訴訟遂行を譲受人にさせることを主たる目的として行ったものか否か》という観点から評価がされたものです。
訴訟遂行が信託の主な目的であるか否かは、信託契約の条項・受託者が弁護士か否か・委託者と受託者の関係・対価の有無・債権譲渡と訴訟提起までの時間的近接性・譲受人が繰り返し同様の訴訟提起をしているか否かの、諸般の事情を斟酌して実質的に決定されます。
本件では、X自身が債権譲渡の目的を自己加入の弁護士費用特約を利用するためであることを自認せざるをえなかったことが、訴訟信託に該当するという評価を受けた決め手になったと思われます。
なお、所有権留保ローン業者から、評価損請求権を譲り受けた車検証上の名義上の使用者が、評価損を加害者に賠償した案件で、名義上の使用者が当該車両の使用利益を有しかつローン完済時には名義上の使用者が所有権を取得するという事情を踏まえ、訴訟遂行を権利譲受人にさせることを主たる目的とする訴訟信託にはあたらないと評価した、大阪地判2018/7/20交民集51巻4号903頁もあります。
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