死亡慰謝料などに差が出る【一家の支柱】とは?

 

死亡慰謝料などに差が出る【一家の支柱】とは?

Question夫は79歳で、福岡市東区の横断歩道の脇に立っていた際、交差点を右折してきたトラックのドアミラーが身体にごく接近してきたため、とっさに接触を避けようとするあまりバランスを崩して後ろに転倒し、打ちどころが悪く急性硬膜下血腫により亡くなりました。
 
 当初加害者は、目撃者不在やドアミラーに接触を裏づける繊維片が見当たらないことから責任自体を争っていたのですが、なんとか加害者が事故直後に現場に到着した救急隊員への説明内容などから、非接触事故ですが、加害者の民事責任を認めさせることができました。

 夫は宗教法人の代表として年間60万円を得て、かつ、老齢基礎年金104万円をもらい、そのお金をもとに1歳年下の私と2人暮らししていました。死亡慰謝料はどのように判断されますか?
Answer 大阪高判2018/1/26判タ1454号48頁を参考にしています。

 【一家の支柱】か否かという区分は、死亡慰謝料のほかにも生活費控除率にも影響してくるのですが、生活費控除率は実際の収入がどれくらいだったかという要素も大きくかかわってくるので、ここでは死亡慰謝料のみ言及します。
 
 【一家の支柱】とは、法律上の専門用語ではありませんが、交通事故の賠償実務では広く用いられており、被害者の世帯が主に被害者の収入によって生計が維持されている場合を指します。【一家の支柱】を、母親や妻や独身の若年者に比べ高い死亡慰謝料の対象にしている理由は、慰謝料を算定する際の一切の事情の中に遺族の扶養喪失的要素を取り入れているからにほかならないからと言われています。

 すなわち、逸失利益のみでは中間利息を控除された分しか賠償されないため、全ての遺族が法定控除の利率でこれを利殖に回して増やす事態は通常考えられないので、逸失利益のみでは残された遺族の生計を維持するに十分とはいいがたい点を斟酌したものと言われています。

 そもそも、家族構成がどうであるかによって故人の無念の度合の金銭評価に差が出てよいのかという価値観もありますが、前述の発想もまんざら不合理と切り捨てるほどではないのではないでしょうか。

 当該大阪高判2018/1/26では、50年以上にわたり夫婦として同居してきたことなどの事情を総合し、【一家の支柱】に該当するとして妻固有の慰謝料含め死亡慰謝料2800万円を認容しましたが、実際のところ、【一家の支柱】の設定額を大きく下回る死亡慰謝料を認定している裁判例のほうが圧倒的に多いです。

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