満67歳前に定年があり再雇用の給与水準が変更する際の基礎収入は?

 

満67歳前に定年があり再雇用の給与水準が変更する際の基礎収入は?

Question北九州市小倉北区の信用金庫に勤める夫は、バイクで移動中に、並走していたクルマが合図なくいきなり路外に左折してきたので、避けようもない巻き込み事故に遭い、右足を骨折し、疼痛や可動域制限を伴う後遺症が残存しました。就職してからは一貫して営業職の仕事に就き、交通事故までは営業課係長だったのですが、後遺症が残ったので融資課主事という内勤に降格人事されました。
 夫は49歳で症状固定となり、併合9級と認定され、交通事故前は年549万0153円の年収だったのですが、役職手当や営業手当もカットされて収入も減り、営業職での昇格の芽もなくなりました。信用金庫の定年は60歳で、定年後には再雇用の制度がありますが、給与はガクンと減ります。
 労働能力の制限期間は満67歳までカウントするとして、基礎収入は定年の前後を問わずずっと同じままなのでしょうか?
Answer 東京地判2008/3/11交民集41巻2号271頁の事例を参考にしました。
 民間企業は、高齢者雇用安定法により、65歳までの継続雇用義務が課せられました。
 ただし、企業も役所も定年時の給与を維持しつつ雇用を継続することは人件費の負担が厳しいことから、多くの企業では60歳定年を設定し、かつ、定年後も65歳までは再雇用を希望すればそれに企業が応じるという形で継続雇用義務が維持されています。
 ちなみに、公務員はこの法律が設けられる前から、法令上の定年が60才のままですが再任用制度が用意され、定年後も働き続けることはできていました。
 
 とはいえ、人件費抑制のために、定年時の給与水準から再雇用になると半減あるいは半減までせずとも大幅に基本給が減額させられるのが普通です。
 他方、交通事故で死亡や後遺症の逸失利益を算定する際、満67歳までを労働能力喪失期間と評価するのが賠償実務です。
 そこで、損保会社は「仮に満67歳まで労働能力喪失を認定するとしても、定年の前後で大幅に給与水準が変わるのが社会慣行なのだから、定年後の期間に対応する逸失利益を計算する際の基礎収入は、企業規程に則し減額させられた金額を設定すべきだ」という主張をしてきます。
 被害者が公務員のケースで東京地判2003/11/26自保ジ1538号7頁は、給与体系から定年60歳まで一定の昇給昇格があったはずであり交通事故前年の年収のままずっと続いていたと考えるのは合理的ではないとして、交通事故時点での給料に昇給を加味した基礎収入を設定して60歳までの期間を計算すると同時に、定年後に得られたであろう給与水準は定年時のそれと同額のレベルを獲得できた蓋然性までは認定できないと、61歳から67歳までは賃金センサスの金額を基礎収入に設定しました。生活費控除率も60歳を区切りに変更していました。
 ちなみに、定年後の再雇用制度の給与水準が高齢者の賃金センサスの金額を大きく下回っている場合にどう考えるかですが、少なくとも当該被害者の定年前の給与額が同年代の平均賃金にそん色ない場合においては、定年と同時に労働能力が周りの労働者に比べて大きく下がると評価するべきでなく(労働者には何も給与水準が下がった同じ勤務先に雇用され続けるはずとは限らない、定年を機に再雇用よりも良い条件に転職することも十分ありうる)、非常に高い確率で同じ勤務先に雇用され続けたはずという特別の事情でもない限りは、61歳以降は同年齢の平均賃金を基礎収入に据えるべきではないでしょうか。 

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