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福岡地裁小倉支部2015年12月16日自保ジ1981号90頁です。
29歳の男性会社員が自動二輪車を運転し、青信号に従って交差点を直進していたところ、対向車線を走行してきた乗用車が突然、自動二輪車の進路前方に進入する形で交差点内を転回してきたため、自動二輪車はこれを回避することができずに乗用車と衝突する交通事故が発生しました。
被害者はこの交通事故により、第7頸椎棘突起骨折をはじめとする複数の傷害を負い、治療を継続したものの完全な回復には至りませんでした。特に第7頸椎棘突起骨折については、骨折部がくっつかない不安定な状況という「癒合不全」の状態が残存したまま症状固定と判断されました。
骨折部位が頸椎の枢要部ではなかったため、後遺障害等級としては14級9号にとどまると認定され、局所に神経症状が残る状態が医学的にも確認されました。この癒合不全については、今後自然に改善する見込みが極めて乏しく、その周辺の神経症状は長期にわたり継続する可能性が高いと主治医もコメントしました。
このような事情を踏まえ、被害者は、14級9号ではあるけれども、症状固定時の年齢から就労可能年齢の上限とされる67歳までの期間を労働能力喪失期間として認定すべきであると主張し、その期間に対応する逸失利益の賠償を求めました。

これに対し、加害者側は14級であることを理由に労働能力喪失期間をごく短期間に制限すべきであると強く主張してきました。
例えば、後遺障害認定通知の中で「症状の裏付けとなる他覚的所見に乏しく、神経系統の障害が客観的に証明されているとは評価し難い」との記載がある点を強調し、被害者に残存する神経症状は満67歳まで持続するような重いものではないと主張してきました。さらに、被害者が29歳と比較的若年であることから、身体の回復力も高く、将来的には症状が軽快または消失する可能性が十分にあると述べました。
たしかに、一般論として後遺障害14級に該当する神経症状は局所的かつ軽度なものであり、裁判実務においても労働能力喪失期間は3年から5年程度に制限される例が多いという裁判例が散見されます。加えて、相手損保は自らが依頼した顧問医による鑑定意見書を提出し、被害者に残存する症状は長期にわたり労働能力に重大な影響を及ぼすようなものではないとの見解まで提出してきました。

しかし弁護士菅藤は、詳細な反論を行いました。まず、相手損保の顧問医による鑑定意見書については、実際に被害者を診察した臨床医によるものではなく、書面資料のみに基づいて作成されたものである点がとくに問題視されるもので、顧問医の中立性および信頼性には強く疑問があると指摘しました。また、医学的観点からも、第7頸椎棘突起骨折の癒合不全は慢性的な疼痛や機能障害の原因となり得るものと医学文献でも指摘されており、癒合不全が改善する見込がないのに症状だけ消失するとか軽減するという立論にはおよそ人体学に照らして説得力が見出しがたいと強く主張しました。
さらに、弁護士菅藤は、後遺障害14級だから労働能力喪失期間を一律に短期間に限定すべきという根拠は見いだせず、個別具体的な症状の内容や将来予測に応じて柔軟に判断されるべきであると一般論を展開しその上で、14級神経症状の同種事案において67歳までの労働能力喪失が認められた裁判例や、癒合不全が長期的な影響を及ぼすことを示す医学文献などを複数提示し、本件においても長期にわたる労働能力の低下が認められるべきであると強調しました。

裁判所は、これら双方の主張および提出された証拠を公平に検討した結果、弁護士菅藤が代理人を務めた被害者の主張を相当と判断しました。すなわち、本件の後遺障害は単なる一時的な神経症状にとどまるものではなく、癒合不全という器質的異常を伴うものであり、将来にわたって一定の影響が継続する可能性が高いと認定されました。そのため、労働能力喪失期間についても、症状固定時から67歳までの長期にわたる期間を認めるのが相当であるとされました。
また、連続3日以上の私傷病に対して取得できる積立休暇の消化について、年次有給休暇と同様に補償対象とすべきとの評価ももらいました。相手損保は一審判決に納得できず控訴しましたが、無事控訴審でも一審判決を維持する控訴審判決がでました。
本件は、後遺障害等級が比較的軽度と区分されることが多い14級であっても、具体的な症状や医学的根拠、個別事情を弁護士菅藤が丁寧に立証することによって、長期の労働能力喪失が認められ得ることを示した事例といえます。