菅藤浩三ブログ
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福岡県弁護士会の交通事故委員会と犯罪被害者支援に関する委員会が共催した合同研修です。
二木雄策神戸大学名誉教授の基調講演と、それに続き、交通事故委員会に所属する委員による、交通事故刑事裁判での被害者参加制度の利用3例の報告がなされ、その後、二木雄策氏を囲んで弁護士数名によるパネルディスカッションが実施されました。
二木氏は平成5年に、翌日に成人式を迎えるはずだったお嬢さんの命を交通事故で奪われます。ある日突然、交通事故犯罪被害者の遺族となりました。
二木氏は、岩波新書「交通死」の中で、ご自身の裁判経験を踏まえ
・被害者抜きで刑事裁判が進められているのではないか(この点は平成20年に被害者参加制度が新設されたことによりある程度改善されたといえます)
・人の命を奪った加害者に対する量刑が執行猶予とは余りに軽すぎるのではないか
・損保会社や弁護士はビジネスとして賠償交渉を進めているきらいがないか
・逸失利益の算定において生活費控除率・中間利息控除利率・基礎収入(性別差・平均賃金なる言葉の誤用)は論理性を欠いているのではないか
・極端にいえば裁判官や弁護士など法律の世界の住人たちは相互にもたれ合って交通事故を因習で処理していないか
と舌鋒鋭く批判を展開されておられます。
二木氏が交通死を執筆されてから25年以上経過しましたが、特に民事を巡る複数の論点で二木氏が指摘した種々の問題は依然放置されたままといえます。
因習を打開することが一朝一夕になることでないことは承知してはいますけれども、交通事故を専門的に取り扱う弁護士としては、個々の交通事故における被害者の具体的事情を十分に汲みあげ個別の事案解決の中で1つでも2つでも因習にとらわれないよりよい解決を目指して活動しなければならないと痛感させられた基調講演でした。
そして、交通事故刑事裁判での被害者参加には、私も弁護士としてご遺族の依頼により何度も引き受けさせていただきました。
交通事故被害者やその遺族が一番に望む願いはいつも同じです。「あの日を無かったことにしてほしい。元のままに戻してほしい」 誰にも叶えられない望みであることは言っている方だってわかっています、わかっていてもやっぱり言ってしまうのです。
そして、「なぜこの交通事故が起きたのか、相手の口から真実を聞きたい。相手からの心からの謝罪が欲しい。」、この願いも常に出てきます。
たしかに、刑事手続には自ずから真相を知る上での一定の限度もありますけれども、被害者や遺族のその願いに私の弁護士としての技量を振り絞って出来る限り応えてあげたいという想いで、私はこれまで被害者参加制度に関与してきましたし、今後もその心意気を保ちながら、自分の技量を高め、交通事故被害者のために尽力していきたいと、今回の講演や報告を聞いて誓いを新たにしました。