損益相殺

重度障がい者医療費助成の分は交通事故で損益相殺の対象になる?

  • 更新日:2016.6.1
  • 投稿日:2016.4.25

重度障がい者医療費助成の分は交通事故で損益相殺の対象になる?

Question

福岡市南区に住んでいます。58歳の父がつい対面赤信号のときに横断歩道をわたってしまい、黄色信号で横断歩道を通過しようとしたクルマにひかれる交通事故に遭いました。
父は打ち所が悪く、ここ6カ月はずっとICUに入院中です。父は四肢麻痺になってしまったので、先日、身体障がい者1級に認定されました。
残念ながら、父の過失も大きいということで、相手損保には医療費の負担を対応してもらえず、医療費はもっぱら国民健康保険で対応しています。 身体障がい者1級なので、福岡市から重度障がい者医療費助成をもらっています、毎月の医療費が多額なので本当に助かります。
ところで、将来、相手損保と賠償交渉する際に、この福岡市からもらっている重度障がい者医療費の助成分は損益相殺で控除されるのでしょうか?

Answer

まずはお父さまが交通事故で大怪我をされた由、お見舞い申し上げます。  重度障がい者医療費助成制度とは①健康保険に加入している、②身体障がい者1級もしくは2級または精神障がい者1級に該当する方で、③除外事由(例:生活保護を受けている人や配偶者の前年所得が一定額を上回っている人)に該当しない人は、④入院中の食事代や個室代を除いた、健康保険の診療対象となる医療費のうち自己負担相当額を市や県から助成してもらえるという制度です。(福岡県にこの制度があることは確認済みです)。

Qのように幾ら健康保険を利用しても医療費の自己負担が毎月かなりの金額にのぼることが心配されるケースではとても有用な制度といえます。
さて、大阪地裁2013/3/27交民集46巻2号491頁では、尼崎市条例及び吹田市条例に基づく、被害者への医療費の助成金が損益相殺の対象となるかが争われました。

裁判例では「この条例には、給付した市が給付の限度で加害者に対する損害賠償請求権を取得するという代位規定がない。被給付者が加害者からその分の損害賠償を受けたときはその限度内で助成金の返還を命じることができるという文言はあるけれども、常に被給付者が助成金の返還を命じられるとは限らない。だから、この助成金には、損害填補の性質は無く、損益相殺すべきではない。」と説示されています。

損益相殺一般と同様、代位規定の有無を中核に判断しているようです。
すると、Qの重度障がい者医療費助成については、それが国民健康保険法64条1項にいう損害賠償代位の対象となる給付に該当するのであれば損益相殺の対象となるし、該当しないのであれば対象にならないという帰結になるでしょう。
*現時点では、私もこれ以上の調査未了ですので、どちらにあたるかを役所職員に確認でき次第、追加挿入します。

ご家族が高次脳機能障害や遷延性意識障害という重度の怪我を交通事故で被られて、どうするのがよいかお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。

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菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

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弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

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