高次脳機能障害・遷延性意識障害

外傷性てんかんはどの程度の後遺障害に認定されるの?

  • 更新日:2016.6.1
  • 投稿日:2016.4.25

外傷性てんかんはどの程度の後遺障害に認定されるの?

Question

息子が脳挫傷で意識不明になる交通事故に遭いました。幸い懸命の治療のおかげで意識も回復し学校に復学できるようになったものの、残念ながら3か月に1度の頻度で意識を失って転倒しけいれんする発作が発生しています。交通事故に遭う前は全くこんなことはありませんでした。
主治医から外傷性てんかんと診断されました。どの程度の後遺障害に認定されますか?

Answer

てんかんの医学上の定義は「大脳ニューロンの過剰な突発的発射に由来する反復性の発作を主徴とする慢性の脳疾患」というものです。

てんかん発作の起きる仕組みは、大脳の神経細胞の一部が一時的に異常に活発な活動を起こす→周囲の広範な領域の脳神経細胞を巻き込んで脳が一斉に興奮状態に入る→その脳から混乱した指令が、運動感覚・自律神経系または精神機能の異常状態を引き起こす→発作という形で外部に現れる、というものです。

外傷性てんかんの診断基準としてWalkerの6項目が広く用いられています。
1、発作がまさしくてんかん発作である。
2、受傷前にてんかん発作はなかった。
3、外傷は脳損傷を起こすのに十分な程度の強さであった(画像所見
4、てんかん発作の初発が外傷後余り経過してない時期に起こった
(閉鎖性外傷で2年、開放性外傷で10年。ちなみに外傷性てんかんの
初発は2年以内が80%と言われている=発生時期
5、ほかにてんかん発作を起こすような脳や全身疾患を有しない。
6、てんかんの発作の型・脳波所見が脳損傷部位と一致している(脳波所見

ひとこと4(発生時期)について補足説明しますと、閉鎖性外傷とは頭蓋骨がしっかりしていて脳が直接外から見えない状態を言います。開放性外傷とは頭蓋骨が破れて脳が直接外から見える状態です。一般に開放性外傷の方が閉鎖性外傷に比べはるかにてんかん発現の確率が高いと言われています(前者は20~50%、後者はせいぜい数%)。

また6(脳波所見)について補足説明しますと、脳波所見は脳損傷部位との一致を判断するための補助基準に過ぎません。たしかに、てんかんの診断基準として脳波所見は不可欠とされていますけれども、逆に、脳波異常があるからといっててんかん状態にあるとまでは言われていません。

次に後遺障害の等級ですが、自賠責では発作の頻度・発作の型・発作の有無を組み合わせて、その程度を判断しています。自賠責では次の7段階が用意されています
ですから、てんかん発作が起きた場合は、おさまった後に冷静に、周りの人にいつどのような発作が起きたのかを記録してもらい、証拠化することが大事です。
発作の型については、自賠責では〔転倒する発作等〕とそれ以外に分類しています。それぞれどのようなものかは後述します。

1級1号(※高次脳機能障害として認定されます)
てんかん発作のために常に介護を必要とする。

2級1号(※高次脳機能障害として認定されます、旧基準の表現が目安です)       意識障害を伴う発作が平均して1週あたり1回以上多発する。

3級3号(※高次脳機能障害として認定されます、旧基準の表現が目安です)
意識障害を伴う発作が1ヵ月に2回以上多発するため、終身労務に
服することができない。

5級2号⇒1カ月に1回以上の頻度で[転倒する発作等]がある。
この場合の発作の型は、
ⅰ意識障害の有無を問わず転倒する発作、または、
ⅱ意識混濁を呈するとともにうろうろ動き回るなど目的性を欠く行動が
自動的に出現し、発作中は周囲の状況に正しく反応できないなど
状況にそぐわない行為を示す発作が起きる、
のいずれかです。
ⅰとⅱをあわせて、[転倒する発作等]と定義されています。

7級4号⇒αあるいはβ
α:数か月に1回以上の頻度ながら[転倒する発作等]の発作がある。
β:1ヵ月に1回以上の頻度で[転倒する発作等]以外の発作がある。

    [転倒する発作等]以外の発作の例として、両手を中心とする一瞬のぴくつき(ミオクロニー発作)、意識障害を伴わず変な声を出したり口をモグモグさせるなどの発作があげられます。
1997年にポケモンアニメを見ていた多くの子供たちが気分不良・頭痛・吐き気など体調異常を訴えた事件がありましたが、あれは赤と青の点滅刺激が脳全体を興奮させた光過敏性てんかんの反応でして、この[転倒する発作等]以外の発作の1例といえるでしょう。

9級10号⇒γあるいはδ
γ:数か月に1回以上の頻度ながら[転倒する発作]以外の発作がある。
δ:服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されている。

てんかんの治療は薬物治療が中心です。服薬継続しても一定の頻度での転倒する発作等の発現をほぼ完全に抑えられない場合には、7級以上が認定されるという関係にあります。

12級13号⇒服薬も不要でてんかん発作は発現していないけれども、脳波上に
明らかなてんかん性棘波(きょくは、spike wave)を認める。

てんかん患者の場合、脳波に棘波・鋭波(えいは)・徐波(じょは)といった波形が普通見受けられます。そうはいっても、脳波異常とてんかんの発現が常に相関しているとは限らないことは既に説明したとおりです。

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