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交通事故当日、加害者がやらないといけないことは?│福岡 弁護士

  • 更新日:2016.6.1
  • 投稿日:2016.4.25

交通事故当日、加害者がやらないといけないことは?

Question

交通事故を起こさないよう注意して自動車を運転しているつもりですが、万が一に備えての心構えをもっておくのが運転者のマナーと思います。交通事故の加害者になった当日、加害者がやらないといけないことは?

Answer

一部、被害者のなすべきことと重なりますが、むしろ怠った場合に刑事罰を課されることもあるので、かならず加害者は怠ってはいけないことになります。
一般にひき逃げがより重く処罰されるのは、ひいただけでなく逃げたという行動自体が、道路交通法72条1項前段後段に違反する犯罪に該当するからです。

1.警察への届出
加害者には直ちに事故発生を警察に報告する義務が課されています(道路交通法72条1項後段)。
この直ちにというのは、事故発生後すぐに行わなければならず、現場を離れて一度自宅へ帰ったり、他の用事を先に済ませてから報告しても、直ちに報告したことにはなりません。


また、報告を他人に依頼することもできますが、事故現場の向いにある店の店主に「事故で人が倒れている。警察と救急車を呼んでください」と頼んだだけで、実際にその店主が警察に連絡したかどうかを確認せずに現場から立ち去った場合に、報告義務違反にあたるとされています(大阪高裁昭和56年8月27日判タ452号172頁)。なぜなら、報告した加害者は、警察から現場に到着するまで現場を立ち去ってはならないと命じられる(道路交通法72条2項)可能性があるからです。

この事故報告義務を怠った場合には3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金という法定刑が用意されています(道路交通法119条1項10号)。

2.自分が加入している損害保険会社への連絡(これを怠ると、損害保険を利用して賠償することを、損保会社から拒絶されることがあります)、4.事故現場に残っている証拠の確保、5.目撃者の氏名・住所・電話番号の記録化は、交通事故当日、被害者がやっておくべきことは?で触れたとおり、被害者加害者という立場に関わらずやっておくべきでしょう。

3’.運転の停止・状況の確認・負傷者の救護・続発事故の防止
緊急措置義務と読んでいます(道路交通法72条1項前段)。この緊急措置義務を怠った場合には5年以下の懲役又は50万円以下の罰金と、事故報告義務に比べてはるかに重い法定刑が用意されています(道路交通法117条1項)。

なお緊急措置義務は、被害者を負傷させた事実や物を損壊した事実を、明確ではないにせよ、そういう事実が起きたかもしれないと思ったにもかかわらず、その義務を怠った場合に問われますので(最高裁昭和40年10月27日判タ184号147頁)、事故が起きたことすら気づかず現場から離れた場合に限ってはその義務違反に該当することはないようです。

  また、加害者は十分に被害者のキズの程度を確かめる必要があり、全く負傷していないことが明らかであるとかキズが軽くて被害者が医師の診断を受けることを拒絶した場合を除いて、たとえキズが軽いと一見判断される場合であっても、自ら被害者を医師の治療が受けられる状況に置くか、あるいは、救急車到着まで被害者に付き添うとかすることが望ましいです。

    例えば、加害者が被害者に「大丈夫ですか」と声をかけて被害者を抱き起こし、通行人に救急車の手配を依頼した後、現場に接近する救急車を確認してから、無免許飲酒運転が発覚するリスクにおびえ現場を立ち去った場合に、その加害者に無免許運転のほかに、救護義務違反の犯罪が問われました(東京高裁昭和57年11月9日判タ489号128頁)。

    さらには、人気のない真冬の山中で人に重傷を負わせながらその場から逃走したり、より発見されにくい場所に運んで放置したりした場合には、保護責任者遺棄罪やさらには殺人罪にさえ問われる可能性もあるのです。

    続発事故の防止とは、例えば、事故車両や積み荷が道路上に散乱して、他の人の交通を妨害したり危険ある場合には、速やかに車両を移動させたり、散乱物を片付けなければならないということです。
ただ、現場に到着した警察が、証拠保全活動をすることがあるので、警察が来る前は車の移動なども最小限度の距離にとどめて、警察が来てからさらに移動したほうがよいかなど指示を仰ぐのが正しい対応でしょう。

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