交通法規の専門家として西日本新聞に取材されました

 皆さんは運転免許の自主返納という制度を知っていますか?
運転免許証の自主返納は、高齢化社会の進行に伴い、高齢者のドライバーが引き起こす深刻な交通事故が年々増加していることから、生まれた制度です。

 もちろん高齢者だからイコール危険な運転というわけではないのですけれども、おしなべて高齢者は過去の経験に過度にとらわれて自己の運転テクニックを過信しがちであること、運転の機会が多い高齢者ほど格別の根拠を持たない中で高い自尊心を持ち都合の悪い情報を聞き流しがちであること、何よりも身体機能の衰えが自覚を欠く中で進行していることが少なくないこと、これらが高齢者のドライバーによる交通事故が増加している3つの原因といえるでしょう。
 2017年に道交法が改正され、認知症のリスクのある高齢者のドライバーに対し見直し講習や検査が設けられたのも、この一環です。

 さて、本人にはさほど自覚が無くても家族が高齢者が自ら運転するのをやめてほしいと言い出すことも少なくありません。万が一、他人を巻き込んで大事故を起こしてしまうと悔やんでも悔やみきれない事態ですので、そうなる前にと自主返納を選択する高齢者も増えてきました。

 運転免許証の自主返納を行えば、代わりの身分証となる、運転経歴証明書カードを発行してもらえます。この運転経歴証明書を提示することで、バス・タクシー・電車といった交通機関が割引になったり、温泉入浴料金やホテルなど各種商業施設を割引で利用できる特典が付与されます。
 そのほか、副次効果として、歩く機会が増えるので健康増進にも役立つことも指摘されています。

 そんなメリットある運転免許証の自主返納ですが、体調不良などで本人が警察に赴くことができない代わりに、家族が警察に赴く代理返納の可否がいま問題になっています。
 警察庁は代理返納を普及するよう指導しているのですが、にもかかわらず、同じ九州でも各県警で扱いがバラバラなのです。
  私菅藤浩三は、交通法規に詳しい弁護士として2018/10/29西日本新聞朝刊で取材された折、「免許を返納した高齢者を対象にしたタクシー券配布などの自治体サービスがある。(返納の意思があるのに認めなければ)不利益を被ることがある」と指摘しました。

 つまり、心身が不自由でもう自ら車を運転する意向のない高齢者が佐賀県と福岡県にそれぞれ住んでいるとき、代理返納を利用できない福岡県の高齢者はタクシー割引などの自治体サービスを享受できない不利益な状態に置かれてしまうのです。

 福岡県警は「委任状や電話では、正確に本人に返納意思があるかを万全に確認することができず、万が一、本人の意向に反する返納を受理したりすると、運転免許証が失効してしまうので、トラブルになりかねない」という理由から、代理返納に慎重な姿勢を固辞しています。

 しかし、代理返納されても、直ちに受理せずに1週間程度の不服申立期間を設定し、その間に受理した警察が本人の居住地の交番を通じて本人のもとに意思確認に赴くなどの方法を用いれば、そのようなトラブルを回避することはさほど難しくありません。
 警察が全国でフルに網羅しているネットワークを駆使すれば、さほど困難なことでなく、何が何でも代理返納は認めないという姿勢は過度に頑なな印象をぬぐえません。
 福岡県でも早く代理返納がOKとなることを望みます。そのほうが高齢者のドライバーが悲惨な交通事故の加害者になるリスクを少しでも防ぐことに役立つのですから。