高次脳機能障害で意識障害時間の長短の持つ意味は?

 

高次脳機能障害で意識障害時間の長短の持つ意味は?

Question

 福岡県京都郡みやこ町の道路右端を歩行していた際、後方から前方注視不十分の車にあてられ、用水路に転落して外傷性くも膜下出血の大けがをしました。10日間入院しその後6か月通院して症状固定となりましたが、私はまだ40歳なのに記憶力が甚だ落ちて周りの理解のもとにどうにか仕事を続けている状態です。
 画像所見はFRAIR画像で大脳白質に高信号が散見され、事故直後と症状固定時を比較すると側脳室が拡大しているようにも見えますが、放射線科の医師に言わせると、加齢による慢性虚血性変化や年齢変化に伴う通常の脳実質萎縮との区分はしにくいということでした。
 それから、救急隊到着時(交通事故から30分後)にはJCSⅠ-3(=刺激しないで覚醒しているが、自分の名前や生年月日は言えない状態)、救急病院搬送時(交通事故から50分後)にはJCSⅠ-1(=だいたい意識清明だが今一つはっきりしない状態)まで回復していました。
 症状固定となり自賠責で後遺症審査してもらったものの《左慢性硬膜下血種穿孔洗浄術のあとに撮影された画像上、血種は消失し脳挫傷や脳室拡大などの明らかな脳損傷をうかがわせる画像所見はない》という理由で、私に残存する後遺症が脳外傷に起因するものとは捉えられないと非該当認定されました。
 器質性精神疾患ではないという認定にはまるで納得できないのですが、意識障害の時間がさほど長くなかったことも何か影響しているのでしょうか?

Answer 京都地判2019/1/29自保ジ2045号18頁を参考にしました。
 自賠責では、脳外傷による高次脳機能障害と診断する重要ポイントとして、まず①家族や実際の介護者や周辺の人が気づく日常生活の問題、次に②画像所見として急性期における何らかの異常所見(例:脳内の点状出血・脳室内出血・クモ膜下出血)または慢性期にかけての局所的な脳萎縮とくに脳室拡大、が存在することが指摘されていますが、それと並行して、③急性期における意識障害の程度と期間もチェック項目として挙げられています。

 ③に関して具体的には、半昏睡以上の意識障害(JCSで3桁かGCSで8点以下)が6時間以上続くか、あるいは、軽めの意識障害(JCSが2桁か1桁、GCSで13点以上)なら1週間持続していることを要求しています。ただし、高齢者に限ってはこの期間はもっと短くても差し支えないとしています。

 意識障害の期間を重視する理由として、上記京都地判は【意識障害は脳の機能的障害が生じていることを示す指標であり、一次性の脳外傷に起因する意識障害が重度で持続が長いほど、特に脳外傷直後の重度の意識障害が6時間以上継続する場合、高次脳機能障害が生じる可能性が高いとされている】と言及し、Qの被害者の場合に意識障害の程度も軽く時間も1時間にも満たない短さだったとして、脳に器質的損傷が生じたとは認定できないとし、非器質性精神疾患を認定しました。
 ほかにも、意識障害が短時間だったことを理由に高次脳機能障害の発症を否定した事例として大阪地判2016/10/24自保ジ1989号1頁があります。
 交通事故を多く取り扱う福岡の弁護士の経験に照らしても、意識障害時間の長短は自賠責も認定の際に注目していますので、後遺症申請の際には時間の長短をしっかり押さえておく必要があります。

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