菅藤浩三ブログ
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読売新聞2014/11/3朝刊が<損保大手2社 約款見直し~過大請求 防止図る><弁護士保険 支払い厳格化>というタイトルで報道していました。
損保大手2社というのは、三井住友海上と東京海上日動のことのようです。
新聞報道では、三井住友海上の改訂内容に
《①保険金請求できるのは、事前に損保が承認した弁護士に限る
②弁護士の活動が保険契約者にもたらした利益に基づき報酬額を算定する》
と書かれていたので、「マジかよ?!三井住友に唯々諾々と従う弁護士しか、保険契約者が選任できない形にしたのか!?」とびっくりして、三井住友海上の約款をチェックしました。
結論から言うと①は完全な新聞のミスリーディングだと思います。
両社とも約款の表現は以前からの〔予め当社の承認を得て保険金請求権者が委任した弁護士〕のままで、その約款下でどの弁護士はダメだ!とか保険契約者の弁護士選任権自体を損保会社がコントロールしたことはなかったので、その運用がこれからも変わることはたぶんなかろうと推察しています。
他方、②は別にあらためて明記せずともよい当たり前のことなのでしょうが、これをあえて盛り込まざるを得なくなったことに、保険金請求する弁護士の倫理低下が浮かんで見えるのが悲しいです。
そして、東京海上日動の改訂内容については
《③弁護士への依頼前に保険契約者が受け取っていた金銭は、報酬金算定の根拠に組み込めない》
と書かれています。
これまたわざわざ明記せずともよい当たり前のことなのですけど、何とある弁護士は交通事故被害者が加害者側から任意に支払を受けていた治療費まで含めて報酬金を計算して保険金請求していたケースがあったので、あえて③を設けたそうです。嘆かわしい話です。
せっかくですから、弁護士費用特約に関する両社の2014/10/1時点での約款をざっと見比べて気づいた点を幾つか紹介してみます。
Ⅰ、三井住友海上の場合、行政書士報酬については<書類の作成および書類の提出手続の代理の対価として算定される額>を支払報酬としています。
つまり、行政書士に対しては、着手金報酬金というスタイルは採用せず、結果に対応しないあくまで書類作成手数料の範囲でしか特約から支払わないという内容に変わったようです(東京海上日動にはその規程はない)
Ⅱ、三井住友海上の場合、契約車両に搭乗中でない労災事故の場合、弁護士費用特約からの支払はありません(東京海上日動にはこの除外規定はない)。
つまり、通勤中や退社中に、自転車乗車中や歩行中に交通事故被害に遭った場合、三井住友海上では弁護士費用特約は利用できません。
Ⅲ、三井住友海上の場合、弁護士費用特約に基づき保険金請求する際、保険契約者は委任契約書を予め提出し、損保会社の承認を得る必要があります(東京海上日動にはこの規定はない)。
Ⅳ、三井住友海上と別の損保会社の弁護士費用特約に重複して加入している場合、三井住友海上の保険金支払限度は、弁護士費用総額からその別の損保会社から支払い済みの弁護士費用を控除した残額になります(なお、東京海上日動の場合、約款の書き方が複雑でどうなのか一読して分かりかねます)。
Ⅴ、東京海上日動の場合、弁護士費用算定の際、保険契約者の過失減額部分を、経済的利益に含めることはできません(三井住友海上にはこの規定はない)。非典型的な過失割合の事案での着手金算定はどうなるのか、非常に気になります。
Ⅵ、東京海上日動の場合、加害者に対する損害賠償請求と同時受任でなければ、単に被害者請求だけならばその被害者請求の弁護士費用は弁護士費用特約では支払われません。
また、社会通念上不当な損害賠償請求の弁護士費用も弁護士費用特約では支払われません(三井住友海上にはこれらの規定はない)。
おそらく後者は、例えば、事前認定で14級しか得られなかったケースで、被害者が7級認定を希望しているからと、7級認定を素地にした着手金請求を水増し請求と斥けるつもりなんでしょう。ただ、それが社会通念上不当という表現に当てはまるかどうかは議論になるところでしょうね。
結論として、弁護士費用特約と一言にいっても、会社ごとに規約の内容はずいぶん違っているようです。いざ同じ類型の交通事故に遭った際に、A社ならば弁護士費用特約で補填されてもB社ならば補填されないということがあります、なるべく注意を払って加入した方が望ましいです。