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交通事故で使われる、自賠責保険と任意保険はどう違う?

  • 更新日:2022.3.2
  • 投稿日:2016.4.24

交通事故で使われる、自賠責保険と任意保険はどう違う?

Question

福岡県柳川市に住んでいます。
自動車保険には、自賠責保険と任意保険の2つがあると聞きました。どんな違いがあるのですか?保険料が勿体ないので1つにまとめられるなら自賠責保険1つにまとめたいのですが。

Answer

自動車保険には、自賠法5条と自賠法86条の3第1号により刑罰つきで加入が義務付けられている自賠責保険と、保険をつけることが法律で義務付けられていない任意保険の2つがあります。  普通、自動車を運転する皆さんが毎月掛け金を支払って加入している損害保険は任意保険を指します。

1台のクルマにかけられている自賠責保険会社と任意保険会社が別々のこともよくあります。任意保険の証書は自分が加入した損保会社から初回保険料と引き換えに郵送されてくるため自宅に保管していることが多いのに対し、自賠責保険証明書は車検証と一緒にクルマに保管していることが多いようです。
普通は車検の際に、自賠責保険の保証期間が車検有効期間をフルカバーしているかをチェックするので、きちんと車検を受けたクルマであれば自賠責保険未加入という事態は避けられています。

    人身事故が発生したときに被害者への賠償はこれら2つの保険から支払われますけれども、自賠責保険と任意保険との関係は「任意は自賠責の上乗せ」という言い方をします。
つまり、人身事故の損害賠償は、1次的には自賠責で補填され、自賠責保険の枠で足りない部分を2次的に任意保険で補填するのです。

仮に自賠責保険しか加入していなかったら、誤って交通事故で被害者に重い怪我を負わせてしまったときに、多額の賠償金を自賠責保険だけでは用意しきれず家を手放さないといけなくなることもあるのです。

2つの保険は一本化できない類のものですが、任意保険未加入で交通事故を起こしてしまうと被害者にとっても加害者にとっても悲劇です。

任意保険の任意とは「加入するかしないかを選べる任意ではなく、単にどこの保険会社に加入するかを選べる任意にすぎない」、自動車を運転する者のマナーとしてこのような心がけで、必ず両方の保険に加入してクルマを運転して下さい。

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次に、自動車保険と任意保険の特徴的な違いを3つ紹介します。


1つめの違いは、支払枠や支払基準の違いです。

自賠責保険では国が支払基準や支払枠そして保険料を統一して定めています(=自賠責保険会社によって差はありません)。

しかし、任意保険では対人補償無制限とか、保険料の相見積とかいうCMがあるように、保証の枠も保険料も損保会社ごとや保証の内容ごとに替えることができます。
保険料の安さだけに目を向けず、よく内容を調査した上で、自分のライフスタイルにもっともふさわしい自動車保険はどれかを、吟味して任意保険に加入することがとても大事です

     2つめの違いは、自動車事故での対応可能な損害範囲の違いです。

自賠責保険は専ら対人賠償つまり交通事故の相手方の怪我や後遺症や死亡といった人身損害の支払にあてることしかできません。

しかし、任意保険は保険内容が自由に決められるため、対人賠償のほか、自損事故・対物賠償・車両保険・示談代行・人身傷害保険・弁護士費用特約といった、いろんな場面に対応が加入なメニューが用意されています。


3つめの違いは、過失相殺の支払額への反映させかたの違いです。

自動車事故においては被害者にも落ち度がある場合がありますが、任意保険では、被害者の損害額からその落ち度にみあう部分をそのまま差し引いて賠償金を定める運用をしています。

しかし、自賠責保険では、被害者救済を特に重視して、例えば、被害者の過失が70%未満の場合には自賠責保険からの支給額は一切割り引かない、被害者に重過失ある場合に限りその場合でも被害者に有利な割合で減額するという、被害者に有利な取り扱いを支払基準で定めています。

例えば、被害者に後遺障害が無く単に傷害だけだったものの(治療費80万円+自賠責基準で慰謝料40万円と評価されるケースだったとします)、被害者の過失が80%に及ぶ場合、自賠責に請求すれば120万円の枠から20%の減額、すなわち治療費と慰謝料を合算して96万円を回収することができるのです。

任意保険の考え方のみならば(80万円+40万円)×20%=24万円ですから、治療費すら満足に支払ってもらえずアシが出てしまうのと比べると、特に被害者の過失が大きい場面で被害者救済という発想が活かされているのがお分かりいただけると思います。

実際の過失     後遺障害・死亡の減額割合   傷害の減額割合
70%未満            0%                  0%
70~80%           20%差し引く         20%差し引く
80~90%           30%差し引く         20%差し引く
90%を超過          50%差し引く         20%差し引く

#ネットには<人損が120万円の枠内にとどまるならば、過失相殺無しで任意保険から支払ってもらえる>という情報が流布していますが、不正確です。
自賠責基準に即して算出された金額であれば、120万円の枠内にとどまる人損ならば、過失相殺無しで任意保険からも支払ってもらえる>が正確です。

例えば、実際の過失割合は被害者30%、治療費30万円・むち打ちで通院期間90日(実際の通院日数は60日だったとします)・休業損害無し・自宅そばの病院で通院交通費無しというシンプルなケースで説明します。

α:自賠責の支払基準ですと、(治療費30万円+通院慰謝料4200円×要治療期間90日)×加害者の過失100%(過失相殺無し)=67万8000円になります。

β:任意保険との交渉基準ですと、通院3か月に対応して交通事故赤本別表Ⅱの慰謝料53万円を適用できる代わりに、過失相殺がなされますので、(治療費30万円+通院慰謝料53万円)×加害者の過失70%(被害者の過失30%)=58万1000円になります。

このように【自賠責の支払基準α:67万8000円>任意保険との交渉基準β:58万1000円の場合、任意保険との交渉でもα:67万8000円は支払ってもらえる】というのが正確です。
ネットにはあたかも「このケースだと総額120万円未満なので、30万円+53万円=83万円を過失相殺なしで任意保険に支払ってもらえる」と誤解を招く表現が見受けられますが、それは誤りなのでご留意ください。
なお、任意保険は自賠責の支払基準αとおり支払う背景は、任意保険は自賠責にまるまる加害者請求により同額を回収できるため、要するに任意保険の財布を使わず実損ゼロだからです。

    交通事故の人身被害に遭ったときは、取り扱い経験豊富な福岡の菅藤(かんとう)弁護士の無料相談をご遠慮なくご活用ください。

 

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