お得な交通事故マメ知識

同僚災害では交通事故の任意保険が使えない?

  • 更新日:2022.11.10
  • 投稿日:2017.1.22

同僚災害では交通事故の任意保険が使えない?

Question

 太宰府市の事務用品メーカーに勤めています。会社所有のクルマを同僚が運転し、私は助手席に乗り、2人で取引先に向かっていたところ、運転していた同僚がハンドルを切り違えて、クルマの左前部がはげしく電柱にぶつかり、私は鎖骨と肋骨を折る大けがを負い入院することになりました。会社は労災に加入していますし、会社所有のクルマは任意保険にも加入しています。

 ところが、クルマの任意保険会社から「治療費や休業補償や後遺症の補償は労災保険から出ますし、慰謝料は人身傷害保険から出ます。ただ、対人賠償保険は同僚災害ですので使えません。」との連絡が入りました。

 同僚災害の場合、労災保険や人身傷害保険が使えるけど、対人賠償保険が使えないことでどういう不都合があるのか、ピンとこないのですが?

加害者のミスで被害者が怪我した場合

Answer

 同僚災害とは、自動車保険の任意約款では『被保険者(運転者)が、契約車両を使用者(雇用主)の業務に使用中、その業務に従事中の他の使用人(被害者)を怪我させた場合、被保険者が被害者に対して損害賠償を支払うために、任意保険は免責されて使用できない』という文言で表現されています。

加害者のミスで被害者が怪我した場合

 Qのケースのように、加害者と被害者が同じ会社に雇用され、2人が一緒に仕事に従事中に、加害者のミスで被害者が怪我した場合、加害者の賠償を担保する任意保険は適用されないのです。

 なぜ同僚災害で任意保険は免責になる規定を設けているのかは、車両が業務に使用される場合、車両の運行によって業務に従事する従業員は(運転手か否かを問わず)被災する危険が一般に高いことから、その危険を定型的に任意保険の支払対象から除外し、業務上の事故による損害の賠償は一般的に労災保険に委ねる制度をつくったものと理解されています(横浜地裁川崎支部1980/2/14交民集13巻1号207頁)。

対人賠償保険が使えなくても損害をカバーできる?

 では労災保険や人身傷害保険が使えれば、対人賠償保険が使えなくても被害者が被った全ての損害をカバーできるのでしょうか?

 実は、労災保険では慰謝料部分をカバーできませんし、人身傷害保険では約款に定めた定額しか支払えず、その額は裁判基準を下回ることがほとんどなので、裁判基準と約款の定額との差額はカバーできないことになります。

 カバーされない不足部分を受け取るために被害者が講じることのできる手段は、Qのケースでは
①加害者個人に賠償請求する
②勤務先に使用者責任として賠償請求する
③自賠責保険が認定する器質所見を伴う後遺症が残存する場合には被害者自らが加入する任意保険会社に無保険車傷害保険金の支払を請求する(ただし同僚災害の場合に免責要件がついているかもしれません)、が考えられます。

交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、菅藤法律事務所にご相談を

交通事故(人身被害)に遭われてお困りのときは、お気軽に、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご相談ください。


菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

当サイトでは、長年の経験と実績を持つプロの弁護士だからこそ書ける、信頼性の高い一次情報などを発信しています。

弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

ページトップ