死亡事故

交通事故で死亡した被害者の年金加給部分は基礎収入に入るの?

  • 更新日:2016.6.1
  • 投稿日:2016.4.25

交通事故で死亡した被害者の年金加給部分は基礎収入に入るの?

Question

福岡県鞍手郡鞍手町で夫と2人暮らしをしていました。私達夫婦は、夫が永年勤めた会社を定年退職したのち、夫の厚生年金200万円+加給年金40万円、そして私の国民年金20万円で暮らしていました。
ところが、昨年夫が不意の交通事故で死亡しました。私は夫の厚生年金から金額が下がった遺族厚生年金をもらうようになりました。
加害者への損害賠償請求の際、夫が年金をもらっていた事実も逸失利益に含まれると聞きました。この場合、逸失利益を算定する際の基礎収入は、夫の厚生年金200万円+加給年金40万円=240万円なのでしょうか?

Answer

結論から言えば、加給年金の部分は逸失利益の算定基礎となる基礎収入には含まれません。また、夫が亡くなった後解決までの間に新たに受け取ることになった遺族厚生年金は、受取額が確定した範囲で損益相殺の対象となります。 それを明言したのが最高裁1999年10月22日判タ1016号98頁です。

厚生年金の基本部分については、被保険者が保険料を納付したことに基づく給付としての生活を有しているので、交通事故により死亡しなければ平均余命までこれを受け取ることができる蓋然性が高かったとして、逸失利益の算定基礎に組み込むことが一般に是認されています。
これに対し、加給部分については、拠出された保険料の支出者と受取人がその給付を受け取ることとの対価牽連関係を持つ支給でなく社会保障的性格の強い給付であり、加えて、被保険者の意思に決定できる事由(配偶者の離婚・子供の婚姻・子供の養子縁組など)により加算を終了させることが法律上予定されていて基本部分と同程度にその存続が確実なものということはできないとして、逸失利益の算定基礎に組み込まない扱いを明示しました。

この2つのキーワード(対価牽連関係、給付存続の確実性)は、支給される年金に逸失利益の算定基礎となることを是認するかどうかのポイントになっているようで、かつてのように、《その年金は生活保障的意味合いで支給されているものか》という短絡的な基準はもはや採用されていない感じがします。

交通事故(人身被害)でお困りの方は、豊富な解決実績を誇る、福岡の弁護士、菅藤浩三(かんとうこうぞう)にご遠慮なくご相談ください。

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菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を拠点に、交通事故被害者の問題解決をサポートする現役の弁護士。弁護士歴約25年、2000件以上の交通事故案件を解決してきた豊富な実績を持つ。東京大学卒業後、合格率2.69%の司法試験に合格。整理回収機構の顧問弁護士や、日本弁護士連合会・福岡県弁護士会の委員を歴任するなど、交通事故分野における高い専門性と信頼性が評価されている。

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弁護士歴(抜粋)

  • 1992年

    司法試験合格

  • 1995年

    福岡県弁護士会に弁護士登録

  • 2004年

    整理回収機構 九州地区顧問 就任

  • 2006年

    菅藤法律事務所を設立

公的役職歴(抜粋)

  • 2010年~

    日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長

  • 2010年~2013年

    福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長

  • 2014年~

    福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長

  • 2015年~

    福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員

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