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同乗中の人身被害でも、クルマ加入の自賠責が使えないことがある

  • 更新日:2020.2.26
  • 投稿日:2020.2.26

 

同乗中の人身被害でも、クルマ加入の自賠責が使えないことがある

 大阪地判2019/2/27交民集51巻1号254頁の事例を紹介しますと、友人Yがレンタカーを運転しXがレンタカーの後部座席に乗車していた際、友人Yが運転ミスして、同乗者Xが後遺症が残る怪我をしたというものです。レンタカーはX名義で借りられており、XとYが交替しながら運転する予定でした。
 Xは怪我の賠償をレンタカーに付されていた自賠責に支払請求をしたものの、自賠責は「Xは自賠法3条の他人に該当しない、運行供用者に該当する。よって、支払できない」と支払拒絶したというものです、上記大阪地判は自賠責の支払拒絶は正当と説示しました。
 そもそも、自賠責3条本文は「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」と定めています。逆にいえば、自動車を運行供用している最中にケガ人が出ても、ケガ人が運行供用者にとって他人に該当しない場合には自賠法3条では保護されないことになります。分かりやすい例が、自ら運転中に壁や電柱にぶつかってケガする自損事故です。自損事故による人損損害は自賠責保険でなく人身傷害保険で対応するのが通例です。
 上記大阪地判は、このXは交通事故の瞬間には自らハンドルは握っていないけれども、Yと同程度に運行支配をしているので、Y自身のために自動車を運行供用している者として、自賠法3条では補償されないという説示されたのです。
 従前から車検証上の所有者が同乗しているときに、その所有者の知り合いや配偶者が運転中に自損事故を起こし所有者が怪我した場面で、所有者への人身賠償には自賠責は使えないことが言われてましたが、通常レンタカーの借主は車検証上の所有者ではありませんので、そういう場合にも運行供用者にあたるか否かが検討される事例があります。ただ上述のとおり、自賠責保険でなく人身傷害保険で対応するのが通例ですので、人身傷害保険に加入していれば現実の支障は回避できると思われます。

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