重い等級でない後遺症のせいで退職した場合の逸失利益は?

Question福岡県三潴郡大木町で追突されむち打ち症になりました。治療を継続したのですが、首と腰に深刻な後遺症が残存し14級認定されました。
 私の仕事はパソコンに向かってひたすらデータを入力する内容なので、14級といっても首と腰の痛みのためにひどく能率が下がりました。そして、中小企業のため配転もかなえてもらえず、後遺症認定から数か月後に自己都合という形で退職することになりました。
 以降、事務職を探しているのですが、なかなか従前のような仕事が見つからず、空きがあるのは腰に負担のある立ち仕事ばかりでいまだに就職できません。
 退職して仕事できなかったことで失った給与相当分は逸失利益にはなりませんか?

Answer 一般論として、後遺症が残存したことにより、交通事故前の実収入ないし労働能力を喪失したことによって発生した損害を、逸失利益と観念します。
 この一般論からは、交通事故で受傷して退職せざるを得なくなった場面では、交通事故と退職との間に相当因果関係が認められるときは、退職によって喪失した得べかりし収入から再就職により得べかりし収入を控除した差額を、相当因果関係のある逸失利益として請求できるという理屈になります。

 とはいえ、相当因果関係のハードルが意外に高く、そんな怪我をすれば退職を余儀なくされるだろうと評価できるほどの重度の後遺症(例:両目失明や両腕切断だったらパソコンワークに致命傷といえる)ならば相当因果関係ありと容易に認めてもらえる反面、器質的損傷を伴わない等重い等級でない後遺症の場合には、怪我が退職の決定的要素とはなりえないと相当因果関係を是認しないことが多い印象です。その場合は、退職の事情を慰謝料割増事由として利用することになります。
 
・14級の神経症状の後遺症が残り、残り2年の嘱託期間を残して早期退職を選択した被害者について、自発的意思が退職の決定に際し寄与する余地を全く持っていなかったとまでは言い難いとして、再就職の可能性を考慮し、退職後3か月間に限定して100%の逸失利益を算定した大阪地判1970/2/18判タ412号135頁
・14級の神経症状の後遺症が残ってはいるが、日常生活状況に鑑みれば、怪我のために退職せざるを得なかったとは認めがたいとして、離職による逸失利益は一切否定し、通常の14級と同じく5%の逸失利益を算定した東京地判1979/4/19交民集12巻2号504頁
・14級の神経症状の後遺症が残ってはいるが、退職の直接の原因を交通事故による受傷のみに求めるのは困難として、仮に得べかりし収入の喪失があるとしても受傷と相当因果関係に立つ損害と断ずることはできないとしつつ、退職事情があることについて100万円の割増慰謝料を是認した東京地判1969/6/25交民集2巻3号841頁